線型性と線型写像-基本演習
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data/lecture/math/linear-algebra/線型性の基本-講義.n.md
data/lecture/math/linear-algebra/線型写像と行列-講義.n.md
演習方針
線型写像かどうかは、いくつかの数値例ではなく、任意のベクトルとスカラーについて加法性と同次性を確認して判定する。
反例を示すときは、加法性または同次性のどちらかが破れる 1 例を出せばよい。証明するときは、任意の文字で計算する。
問題 1
T:\mathbb R^2\to\mathbb R^2 を
T\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
x+y\\
2x-y
\end{pmatrix}
で定義する。T が線型写像であることを示せ。
解答例
○
u=(x_1,y_1)^T、v=(x_2,y_2)^T とする。
T(u+v)
=
\begin{pmatrix}
x_1+x_2+y_1+y_2\\
2(x_1+x_2)-(y_1+y_2)
\end{pmatrix}
であり、
T(u)+T(v)
=
\begin{pmatrix}
x_1+y_1\\
2x_1-y_1
\end{pmatrix}
+
\begin{pmatrix}
x_2+y_2\\
2x_2-y_2
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
x_1+x_2+y_1+y_2\\
2(x_1+x_2)-(y_1+y_2)
\end{pmatrix}
なので加法性が成り立つ。
また、スカラー c について
T(cu)
=
\begin{pmatrix}
cx_1+cy_1\\
2cx_1-cy_1
\end{pmatrix}
=
c
\begin{pmatrix}
x_1+y_1\\
2x_1-y_1
\end{pmatrix}
=
cT(u)
なので同次性も成り立つ。したがって T は線型写像である。
解説
この問題では、線型性を定義から確認している。係数つきの一次式で作られていても、任意の u,v,c について加法性と同次性を確認するまでは証明にならない。
問題 2
S:\mathbb R^2\to\mathbb R^2 を
S\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
x+1\\
y
\end{pmatrix}
で定義する。S が線型写像ではないことを示せ。
解答例
○
線型写像なら S(0)=0 でなければならない。しかし
S\begin{pmatrix}0\\0\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}
\ne
\begin{pmatrix}0\\0\end{pmatrix}
である。したがって S は線型写像ではない。
解説
平行移動は直線を直線へ移すが、原点を原点へ保たないため線型ではない。線型性の反例では、まず T(0)=0 を満たすかを確認すると早い。
問題 3
R:\mathbb R^2\to\mathbb R^2 を
R\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
x^2\\
y
\end{pmatrix}
で定義する。R が線型写像ではないことを、同次性の失敗から示せ。
解答例
○
u=(1,0)^T、c=2 とすると、
R(2u)=R\begin{pmatrix}2\\0\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}4\\0\end{pmatrix}
である。一方、
2R(u)
=
2\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}2\\0\end{pmatrix}
である。したがって R(2u)\ne2R(u) であり、同次性が成り立たない。
解説
x^2 のような非線型な項があると、スカラー倍の倍率が保たれない。この問題は、原点を保つだけでは線型性に十分でないことを確認している。
問題 4
線型写像 T:\mathbb R^3\to\mathbb R^2 が
T(e_1)=\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix},\qquad
T(e_2)=\begin{pmatrix}-1\\2\end{pmatrix},\qquad
T(e_3)=\begin{pmatrix}3\\1\end{pmatrix}
を満たすとする。T の標準基底に関する行列を求め、T(2,-1,4)^T を計算せよ。
解答例
○
行列の列は標準基底の像なので、
A=
\begin{pmatrix}
1&-1&3\\
0&2&1
\end{pmatrix}
である。また
(2,-1,4)^T=2e_1-e_2+4e_3
だから、
T(2,-1,4)^T
=
2T(e_1)-T(e_2)+4T(e_3)
=
\begin{pmatrix}15\\2\end{pmatrix}
である。
解説
この問題は、行列の列が基底ベクトルの行き先を記録していることを確認している。線型性があるため、任意の入力は基底の像の同じ係数による線型結合で計算できる。
問題 5
線型写像 T:V\to W とベクトル v_1,v_2 について、v_2=3v_1 が成り立つとする。このとき T(v_2) と T(v_1) の関係を述べよ。
解答例
○
同次性より
T(v_2)=T(3v_1)=3T(v_1)
である。
解説
線型写像は線型結合の関係を保存する。したがって、入力側で従属している関係は、出力側でも同じ係数の関係として残る。ただし、逆に出力側で従属しているからといって、入力側で同じ関係があったとは限らない。
問題 6
T:\mathbb C\to\mathbb C を
T(z)=\overline z
で定義する。\mathbb C を \mathbb R 上のベクトル空間と見ると T が実線型であり、\mathbb C 上のベクトル空間と見ると複素線型ではないことを示せ。
解答例
○
z,w\in\mathbb C について
T(z+w)=\overline{z+w}=\overline z+\overline w=T(z)+T(w)
である。また、a\in\mathbb R なら
T(az)=\overline{az}=a\overline z=aT(z)
なので、T は実線型である。
一方、複素のスカラー i を使うと、
T(i\cdot 1)=\overline i=-i
だが、
iT(1)=i
である。したがって T(i\cdot1)\ne iT(1) であり、複素線型ではない。
解説
この問題は、線型性が「どの体をスカラーとして使うか」に依存することを確認している。同じ写像でも、実数のスカラーだけを許す場合と、複素数のスカラーを許す場合で同次性の意味が変わる。