10補強問題:正定値性と最小多項式の定理確認
10.1問題 7
H=\begin{pmatrix}2&1\\1&3\end{pmatrix}
の正定値性を、固有値、首座小行列式、平方完成の 3 通りで確認せよ。
10.2解答例
固有値は
\det(H-\lambda I)=(2-\lambda)(3-\lambda)-1=\lambda^2-5\lambda+5
の根なので、
\lambda=\frac{5\pm\sqrt5}{2}
であり、どちらも正である。首座小行列式は 2>0、\det H=5>0 である。また、
2x^2+2xy+3y^2=2\left(x+\frac{y}{2}\right)^2+\frac52y^2
なので、(x,y)\ne0 なら正である。
10.3解説
実対称 2\times2 行列では、「固有値がすべて正」「首座小行列式が正」「正の平方の和に直せる」という読みが一致する。
10.4問題 8
実対称の場合、二次形式 q(x)=x^TAx が正定値であることと、A の固有値がすべて正であることが同値である理由を証明せよ。
10.5解答例
スペクトル定理より、直交行列 Q を用いて
Q^TAQ=\operatorname{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n)
と書ける。y=Q^Tx とおくと、Q は可逆で長さを保つので、x\ne0 と y\ne0 は同値である。このとき
q(x)=x^TAx=y^T\operatorname{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n)y=\sum_i\lambda_i y_i^2
である。すべての \lambda_i>0 なら、y\ne0 に対してこの和は正である。逆に、ある \lambda_j\le0 があれば y=e_j と取ることで q(x)=\lambda_j\le0 となる方向が存在し、正定値ではない。
10.6解説
スペクトル定理は二次形式を独立な平方座標へ分解する。正定値性は、その係数がすべて正であることに等しい。
10.7問題 9
最小多項式が一次式に分解する複素行列について、対角化可能であることと、最小多項式が重複する一次因子を持たないことが同値である理由を説明せよ。問題 4 の D と J で確認せよ。
10.8解答例
行列が対角化可能なら、対角成分に現れる相異なる固有値を \lambda_1,\ldots,\lambda_s として、
\prod_{i=1}^s(t-\lambda_i)
が対角行列を 0 にし、したがって元の行列も 0 にする。重複因子は不要である。逆に、最小多項式が相異なる一次因子の積なら、空間が固有空間の直和に分解し、固有ベクトルの基底を取れる。
D では m_D(t)=t-1 で重複因子がなく、対角化可能である。J では m_J(t)=(t-1)^2 に重複因子があり、対角化可能ではない。
10.9解説
最小多項式の重複因子は、最大のジョルダンブロックの大きさを測る。1 より大きいブロックがあるとき、重複因子が現れる。