12補強問題:スペクトル定理と射影分解
12.1問題 6
A を実対称行列とする。異なる固有値に対応する固有ベクトルが直交することを証明せよ。
12.2解答例
Av=\lambda v、Aw=\mu w、\lambda\ne\mu とする。A^T=A なので、
\lambda\langle v,w\rangle=\langle Av,w\rangle=\langle v,Aw\rangle=\mu\langle v,w\rangle
である。したがって (\lambda-\mu)\langle v,w\rangle=0 である。\lambda\ne\mu より、\langle v,w\rangle=0 となる。
12.3解説
これはスペクトル定理の背後にある基本の直交性である。対称性により、行列を内積の片側から反対側へ移せる。
12.4問題 7
スペクトル定理を使って、
C=\begin{pmatrix}2&1\\1&2\end{pmatrix}
を「固有値 × 直交射影」の和として書け。
12.5解答例
問題 3 より、
q_1=\frac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix},
\qquad
q_2=\frac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}
を取れ、対応する固有値は 3 と 1 である。したがって
C=3q_1q_1^T+1q_2q_2^T
である。実際、
q_1q_1^T=\frac12\begin{pmatrix}1&1\\1&1\end{pmatrix},
\qquad
q_2q_2^T=\frac12\begin{pmatrix}1&-1\\-1&1\end{pmatrix}
なので、
3q_1q_1^T+q_2q_2^T=\begin{pmatrix}2&1\\1&2\end{pmatrix}=C
となる。
12.6解説
スペクトル定理は、行列を直交射影の和として読む定理でもある。q_i 方向へ射影し、その方向を \lambda_i 倍して足し戻している。
12.7問題 8
A=\begin{pmatrix}4&0\\0&1\end{pmatrix},
\qquad
x_0=\begin{pmatrix}1\\2\end{pmatrix}
について、A^nx_0 を求め、正規化した方向が長期的にどうなるかを説明せよ。
12.8解答例
A は対角行列なので、
A^nx_0=\begin{pmatrix}4^n&0\\0&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1\\2\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}4^n\\2\end{pmatrix}
である。n が大きくなると第 1 成分が支配的になる。したがって正規化した方向は e_1 に近づく。
12.9解説
対角化可能な行列の累乗では、初期ベクトルが最大の固有値の方向に成分を持つなら、その方向が長期的に支配する。
12.10問題 9
A=\begin{pmatrix}
0&1\\
-2&3
\end{pmatrix}
について、固有値問題を解け。すなわち、固有値と各固有空間を求めよ。
12.11解答例
まず
\det(A-\lambda I)
=
\det\begin{pmatrix}
-\lambda&1\\
-2&3-\lambda
\end{pmatrix}
=\lambda^2-3\lambda+2
=(\lambda-1)(\lambda-2)
である。したがって固有値は 1,2 である。
\lambda=1 では
A-I=
\begin{pmatrix}
-1&1\\
-2&2
\end{pmatrix}
なので -x+y=0、したがって
E_1=\operatorname{span}\left\{\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}\right\}
である。\lambda=2 では
A-2I=
\begin{pmatrix}
-2&1\\
-2&1
\end{pmatrix}
なので -2x+y=0、したがって
E_2=\operatorname{span}\left\{\begin{pmatrix}1\\2\end{pmatrix}\right\}
である。
12.12解説
この問題は、固有値問題を「固有値を先に決め、次に核を求める」という手順で確認する問題である。\lambda を求める前に固有ベクトルを探そうとすると、未知数が増えて方針が不明確になる。
12.13問題 10
p(t)=t^3-6t^2+11t-6
の同伴行列を作り、\lambda=2 に対応する固有ベクトルを 1 つ示せ。
12.14解答例
p(t)=t^3+c_2t^2+c_1t+c_0 と見ると、c_2=-6,\ c_1=11,\ c_0=-6 である。したがって
C_p=
\begin{pmatrix}
0&1&0\\
0&0&1\\
6&-11&6
\end{pmatrix}
である。p(2)=0 なので、
v(2)=\begin{pmatrix}1\\2\\4\end{pmatrix}
は固有値 2 に対応する固有ベクトルである。実際、
C_pv(2)=
\begin{pmatrix}
2\\4\\8
\end{pmatrix}
=2v(2)
である。
12.15解説
同伴行列では、多項式の係数が最後の行に入る。符号を反転して -c_0,-c_1,\ldots,-c_{n-1} と並べる点が典型的な誤り箇所である。
13証明演習:固有値と対角化の基本定理
13.1問題
異なる固有値に対応する固有ベクトルが線型独立であることを証明せよ。また、対角化できることと固有ベクトルの基底を持つことが同値である理由を説明せよ。
13.2解答
\sum a_iv_i=0 とし、両辺に A を作用させる。さらに最初の式に一つの固有値を掛けた式を引くと、より少ない固有ベクトルの線型関係になる。帰納法により、すべての係数は 0 である。
A=PDP^{-1} なら、AP=PD である。P の列を比べると、それぞれが固有ベクトルである。逆に固有ベクトルの基底を列に並べて P を作ると、AP=PD となり A=PDP^{-1} である。
13.3解説
対角化は、基底を固有ベクトルへ取り替えることに対応する。