状態方程式の基本
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1導入
この講義では、システムの内部状態をベクトルとして表現し、入力を与えたときの時間発展、出力、安定性を状態方程式から分析する。
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2状態と状態空間表現
状態とは、ある時刻における値と、それ以後の入力が与えられれば、システムの将来の時間発展を一意に決定できる十分な内部情報である。状態の選択は一意とは限らず、冗長な変数を含む表現もあり得る。有限次元 LTI システムでは、同じ入出力関係を表す最小実現どうしは相似変換で結ばれる。
連続時間 LTI システムの状態空間表現を
\dot{\mathbf x}(t)=A\mathbf x(t)+B\mathbf u(t),\qquad \mathbf y(t)=C\mathbf x(t)+D\mathbf u(t)
とする。状態 \mathbf x\in\mathbb R^n、入力 \mathbf u\in\mathbb R^m、出力 \mathbf y\in\mathbb R^p に対し、
A\in\mathbb R^{n\times n},\quad B\in\mathbb R^{n\times m},\quad C\in\mathbb R^{p\times n},\quad D\in\mathbb R^{p\times m}
である。A は状態間の結合、B は入力の作用、C は状態から出力への写像、D は入力から出力への直接項を表す。
3二階方程式からの構成
質量 m>0、減衰係数 c\ge 0、ばね定数 k\ge 0 の系
m\ddot q+c\dot q+kq=u(t)
を考える。x_1=q、x_2=\dot q と定義すると、
\frac{d}{dt}\begin{pmatrix}x_1\\x_2\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}0&1\\-k/m&-c/m\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}x_1\\x_2\end{pmatrix}
+\begin{pmatrix}0\\1/m\end{pmatrix}u(t)
となる。位置と速度は物理次元が異なるため、A の各成分も同一の単位ではない。ただし、各行の積 A\mathbf x は対応する状態微分と同じ物理次元を持つ。この次元整合性はモデルの検査に利用できる。
4状態遷移
A と B が定数行列であるとき、初期状態 \mathbf x(0)=\mathbf x_0 に対する解は
\boxed{\mathbf x(t)=e^{At}\mathbf x_0+\int_0^t e^{A(t-\tau)}B\mathbf u(\tau)\,d\tau}
である。状態遷移行列 e^{At} は零入力における状態の時間発展を表し、積分項は入力履歴の寄与を表す。
5固有値と内部安定性
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零入力系 \dot{\mathbf x}=A\mathbf x の原点が漸近安定であるとは、十分小さい初期状態からの解が原点近傍に留まり、かつ t\to\infty で \mathbf x(t)\to 0 となることである。
有限次元の連続時間 LTI システムでは、A のすべての固有値が開左半平面、すなわち \operatorname{Re}\lambda<0 にあることと、原点の大域的指数安定性は同値である。実部が正の固有値があれば不安定である。虚軸上の固有値がある場合は、ジョルダン構造により有界または発散となり得るが、漸近安定ではない。
6伝達関数との関係
初期状態を 0 としてラプラス変換し、sI-A が可逆な s を考えると、
\mathbf X(s)=(sI-A)^{-1}B\mathbf U(s)
であり、
\boxed{G(s)=C(sI-A)^{-1}B+D}
を得る。ここで G(s)\in\mathbb C^{p\times m} は伝達関数行列である。入力から励起できないモードを不可制御モード、出力に現れないモードを不可観測モードという。状態空間表現がこれらのモードを含むと、A の固有値が G(s) の極として現れないことがある。したがって、伝達関数だけからすべての内部安定性を判定できるとは限らない。
7要点
- 状態は、将来入力とともに将来応答を決定する内部情報である。
- 行列 A,B,C,D の次元は、状態、入力、出力の次元から決まる。
- e^{At} は零入力応答を記述し、A の固有値は内部安定性を決定する。
- G(s)=C(sI-A)^{-1}B+D は零初期状態の入出力関係であり、内部のすべてのモードを表示するとは限らない。