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置換ちかんpermutationによる行列式ぎょうれつしきdeterminant定義ていぎ

date2026-07-14document_iddoc_e71393960578c58ac4e3a17955dff07adescription置換と符号を用いて一般の行列式を定義し、多重線型性・交代性・三角行列の公式・積の公式がどこから出るかを証明する講義である。prerequisites正方行列 / 順列と置換の基本 / 線型性 / 行列式の直感type講義content_typelecturestatusactiverelateddata/lecture/math/linear-algebra/determinants.lecture.n.md / data/lecture/math/linear-algebra/determinant-computation-rules.lecture.n.md / data/lecture/math/linear-algebra/cofactor-expansion-and-invertibility.lecture.n.md / data/lecture/math/probability/counting-permutations-and-combinations.lecture.n.md / data/exercise/math/linear-algebra/determinants-and-invertibility.exercise.n.md
mathlinear-algebraundergraduatelecturedeterminant

1導入どうにゅう

この講義こうぎ重要じゅうようなのは、行列式ぎょうれつしきdeterminantを「n 成分せいぶん重複ちょうふくなくえらび、そのえらかたorientationおうじて符号ふごうけてりょう」として定義ていぎすることである。

2×2公式こうしき det(abcd)=ad-bc では、adbc の 2 こうしかえない。しかし一般いっぱんn×n 行列ぎょうれつmatrixでは、各行かくぎょうから 1 ずつ、しかも各列かくれつも 1 かいずつ使つか選択せんたくをすべて必要ひつようがある。その選択せんたく記録きろくする道具どうぐ置換ちかんpermutationである。

2用語ようご定義ていぎ

2.1置換ちかんpermutation

置換ちかんpermutationとは、集合しゅうごう {1,,n} から自分自身じぶんじしんへの全単射ぜんたんしゃbijectionである。全単射ぜんたんしゃbijectionとは、重複ちょうふくけもなく対応たいおうさせる写像しゃぞうmapである。

たとえば n=3 のとき、

σ(1)=2,σ(2)=3,σ(3)=1

置換ちかんpermutationである。ぎょう 1,2,3たいして、れつ 2,3,1えらぶという意味いみである。

{1,,n} のすべての置換ちかんpermutation集合しゅうごうSnく。この講義こうぎでは、Sn を「すべてのならえをあつめたもの」として使つかえばよい。

2.2反転数はんてんすうinversion number符号ふごうsign

置換ちかんpermutation σたいして、i<j なのに σ(i)>σ(j) となるくみ (i,j)反転はんてんinversionぶ。反転数はんてんすうinversion numberは、そのようなくみ個数こすうである。

反転数はんてんすうinversion number偶数ぐうすうなら偶置換ぐうちかんeven permutation奇数きすうなら奇置換きちかんodd permutationである。置換ちかんpermutation符号ふごうsign

sgn(σ)=(-1)反転数

定義ていぎする。偶置換ぐうちかんなら +1奇置換きちかんなら -1 である。

2.3置換ちかんpermutationによる行列式ぎょうれつしきdeterminant定義ていぎ

A=(aij)n×n 行列ぎょうれつmatrixとする。行列式ぎょうれつしきdeterminant

detA=σSnsgn(σ)a1σ(1)a2σ(2)anσ(n)

定義ていぎする。

このしきaiσ(i) は、だい i ぎょうrowからだい σ(i) れつcolumn成分せいぶんえらぶことをあらわす。σ置換ちかんpermutationであるため、おなれつcolumnを 2 かい使つかうことはない。

3方針ほうしん

この定義ていぎから証明しょうめいしたい性質せいしつつぎの 5 てんである。

  1. 単位行列たんいぎょうれつidentity matrixでは detI=1 である。
  2. 行列式行列式ぎょうれつしき各行かくぎょうまたは各列かくれつについて線型せんけいlinearである。
  3. 2 ほんぎょうrowまたはれつcolumn交換こうかんすると符号ふごうsign反転はんてんする。
  4. 2 ほんぎょうrowまたはれつcolumnひとしいと行列式ぎょうれつしきdeterminantは 0 である。
  5. この 3 原理げんり、すなわち多重線型性たじゅうせんけいせいmultilinearity交代性こうたいせいalternationdetI=1 は、行列式ぎょうれつしきdeterminant一意いちい決定けっていする。

さき置換ちかんpermutationしき定義ていぎとしてき、そこから計算規則けいさんきそくみちびく。計算規則けいさんきそく暗記あんきするのではなく、「えらかたえると符号ふごうsignわる」ことを根拠こんきょにする。

4直感的ちょっかんてき説明せつめい

行列式ぎょうれつしきdeterminant各項かくこうは、行列ぎょうれつなかから「各行かくぎょう 1 各列かくれつ 1 」をえら方法ほうほうである。おなれつcolumnを 2 かいえらぶと、体積たいせきつくるための独立どくりつした方向ほうこう不足ふそくする。そのため、置換ちかんpermutationだけを使つかって選択せんたくする。

符号ふごうは、選択せんたくしたれつcolumn順序じゅんじょ標準ひょうじゅん順序じゅんじょからどれだけわったかを記録きろくする。えが偶数回ぐうすうかいならきはたもたれ、奇数回きすうかいならきは反転はんてんする。この「きの情報じょうほう」がなければ、面積めんせき体積たいせきおおきさだけはめても、行列式ぎょうれつしきdeterminant正負せいふ説明せつめいできない。

2×2 では、えらかたは 2 とおりだけである。れつ1,2じゅんえらぶと adれつ2,1じゅんえらぶと bc であり、後者こうしゃは 1 かい交換こうかんなので符号ふごうsignつ。したがって ad-bcあらわれる。

5厳密げんみつ説明せつめい

5.11. 2×2公式こうしきもど

A=(abcd)

とする。S2置換ちかんpermutationは 2 である。

σsgn(σ)こう
σ(1)=1,σ(2)=2+1ad
σ(1)=2,σ(2)=1-1bc

したがって

detA=ad-bc

である。置換ちかんによる定義ていぎは、2×2公式こうしきふくんでいる。

5.22. 単位行列たんいぎょうれつidentity matrix行列式ぎょうれつしきdeterminant

単位行列たんいぎょうれつidentity matrix I では、対角成分たいかくせいぶんだけが 1 で、非対角成分ひたいかくせいぶん0 である。置換ちかんpermutation σ恒等置換こうとうちかんでないなら、ある i について σ(i)i となり、そのこうには 0ふくまれる。

したがって非零ひぜろこう恒等置換こうとうちかんだけであり、

detI=1

である。

5.33. 多重線型性たじゅうせんけいせいmultilinearity

行列式ぎょうれつしきdeterminantぎょうrow関数かんすうとしてる。あるだい r ぎょうrowだけを u+vえると、各項かくこうだい r 成分せいぶんだけが

(u+v)σ(r)=uσ(r)+vσ(r)

となる。したがって分配ぶんぱいすると、行列式ぎょうれつしきdeterminantは「だい r ぎょうrowu にした行列ぎょうれつ行列式ぎょうれつしきdeterminant」と「v にした行列ぎょうれつ行列式ぎょうれつしきdeterminant」のになる。

まただい r ぎょうrowλu にすると、すべてのこうλ が 1 だけそとる。よって行列式ぎょうれつしきdeterminantだい r ぎょうrowについて線型せんけいlinearである。任意にんいぎょうrowおなじため、多重線型性たじゅうせんけいせいmultilinearity成立せいりつする。

れつcolumnについても同様どうようである。れつ場合ばあいは、えらばれる成分せいぶんaiσ(i)列番号れつばんごうによってまるだけで、各項かくこうにそのれつcolumnから因子いんしが 1 だけあらわれる。

5.44. 行交換ぎょうこうかんrow swap符号ふごうsign反転はんてんする

τだい p ぎょうrowだい q ぎょうrow交換こうかんする置換ちかんpermutationとする。BAだい p ぎょうrowだい q ぎょうrow交換こうかんした行列ぎょうれつとする。

B行列式ぎょうれつしきdeterminantこうAぎょうなおすと、置換ちかんpermutationσ から στわる。行交換ぎょうこうかん τ は 1 かい交換こうかんなので、

sgn(στ)=-sgn(σ)

である。σSn 全体ぜんたいうごくと、στSn 全体ぜんたいうごく。したがって

detB=-detA

である。

列交換れつこうかんcolumn swapでもおな結論けつろんになる。れつ交換こうかんすることは、置換ちかんあたい交換こうかんすることであり、やはり符号ふごうsignを 1 かい反転はんてんさせる。

5.55. 2 ほんぎょうrowひとしいと 0 になる

2 ほんぎょうrowひとしい行列ぎょうれつA とする。その 2 ほん交換こうかんしても行列ぎょうれつそのものはわらない。一方いっぽう前節ぜんせつより行列式ぎょうれつしきdeterminant符号ふごうsign反転はんてんする。

したがって

detA=-detA

である。実数じっすうまたは複素数ふくそすううえでは、これは detA=0意味いみする。2 ほんれつcolumnひとしい場合ばあい同様どうようである。

5.66. 特徴とくちょうづけの定理ていり

定理ていり
ぎょうrowかんして多重線型たじゅうせんけいmultilinearで、2 ほんぎょうrowひとしいと 0 になり、F(I)=1たす関数かんすう F は、行列式ぎょうれつしきdeterminantひとしい。

証明しょうめい
Aだい i ぎょうrowを、標準基底ひょうじゅんきてい e1,,enもちいて

Ri=j=1naijej

く。F多重線型性たじゅうせんけいせいmultilinearity使つかって展開てんかいすると、F(A)

F(ej1,ej2,,ejn)

かたちこうになる。もし j1,,jn重複ちょうふくがあれば、2 ほんぎょうrowひとしいため、そのこうは 0 である。

したがってのこるのは、(j1,,jn)置換ちかんpermutationになっている場合ばあいだけである。このとき

F(eσ(1),,eσ(n))=sgn(σ)F(e1,,en)=sgn(σ)

である。ここで、ぎょう交換こうかん符号ふごうsignわることと F(I)=1使つかった。よって

F(A)=σSnsgn(σ)a1σ(1)anσ(n)=detA

である。これで一意性いちいせいuniquenessしめされた。

5.77. 三角行列さんかくぎょうれつtriangular matrix行列式ぎょうれつしきdeterminant

A上三角行列うえさんかくぎょうれつupper triangular matrixなら、i>j成分せいぶん aij は 0 である。あるこう

a1σ(1)a2σ(2)anσ(n)

非零ひぜろであるには、すべての i について σ(i)[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"ge\")")]i でなければならない。しかし σ(1),,σ(n)1,,nならえなので、つね

1+2++n

である。すべての σ(i)[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"ge\")")]iおなじなら、σ(i)=i がすべての i成立せいりつする。非零ひぜろ寄与きよするのは恒等置換こうとうちかんだけである。

したがって

detA=a11a22ann

である。下三角行列したさんかくぎょうれつlower triangular matrixでも同様どうよう対角成分たいかくせいぶんせきになる。

5.88. せき公式こうしき

定理ていり
n×n 行列ぎょうれつmatrix A,B について、

det(AB)=detAdetB

である。

証明しょうめい
B固定こていし、F(A)=det(AB)く。ABだい i ぎょうrowは、Aだい i ぎょうrow係数けいすうとして、Bぎょうrow線型結合せんけいけつごうしたものである。したがって F(A)Aぎょうrowかんして多重線型たじゅうせんけいmultilinearである。

また A の 2 ほんぎょうrowひとしいと、AB対応たいおうする 2 ほんぎょうrowひとしいため、F(A)=0 である。さらに

F(I)=det(IB)=detB

である。

特徴とくちょうづけの定理ていりより、F(A)detA定数倍ていすうばいであり、その定数ていすうF(I)=detB である。よって

F(A)=detAdetB

すなわち det(AB)=detAdetB である。

この公式こうしきは、可逆性かぎゃくせいinvertibilityとの接続せつぞく重要じゅうようである。A可逆かぎゃくinvertibleなら AA-1=I なので、

detAdet(A-1)=1

となり、detA0したがう。

6具体例ぐたいれい

A=(120034506)

置換ちかんpermutation定義ていぎ計算けいさんする。S3 には 6 置換ちかんpermutationがある。

\begin{aligned} \det A &= a_{11}a_{22}a_{33} +a_{12}a_{23}a_{31} +a_{13}a_{21}a_{32}\\ &\quad -a_{13}a_{22}a_{31} -a_{12}a_{21}a_{33} -a_{11}a_{23}a_{32} \end{aligned}

である。ここへあたい代入だいにゅうすると、

detA=1·3·6+2·4·5+0·0·0-0·3·5-2·0·6-1·4·0=58

となる。

このれい確認かくにんすべきてんは、6 こう丸暗記まるあんきすることではない。各項かくこうは「各行かくぎょう 1 各列かくれつ 1 」をたす選択せんたくであり、符号ふごうsignはその選択せんたく置換ちかんpermutation偶奇ぐうきparityからまっている。

7べつ見方みかた

7.1代数的だいすうてき見方みかた

置換ちかんpermutation定義ていぎは、行列式ぎょうれつしきdeterminant完全かんぜん成分せいぶん方法ほうほうである。抽象的ちゅうしょうてきな「体積たいせきvolume」を使つかわずに、有限個ゆうげんこせきだけで定義ていぎできる。証明しょうめい成分せいぶんもどしたいときに有効ゆうこうである。

7.2幾何的きかてき見方みかた

符号ふごうsignは、けられた体積たいせきoriented volumeきをあらわす。れつを 1 かい交換こうかんすると、基準きじゅんきが反転はんてんする。そのため行列式ぎょうれつしきdeterminant符号ふごう反転はんてんする。

7.3計算けいさんとしての見方みかた

置換ちかんpermutation定義ていぎ概念がいねん根拠こんきょとして重要じゅうようである。しかし n! こうつため、おおきい行列ぎょうれつmatrix直接計算ちょくせつけいさんにはかない。実際じっさい計算けいさんでは、余因子展開よいんしてんかいcofactor expansion行基本変形ぎょうきほんへんけいelementary row operation使つかう。

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8見分みわかた

  • 行列式行列式ぎょうれつしき性質せいしつ証明しょうめいしたいときは、多重線型性たじゅうせんけいせいmultilinearity交代性こうたいせいalternationdetI=1 の 3 条件じょうけんからめる。
  • 行列式行列式ぎょうれつしき公式こうしきそのものの根拠こんきょ確認かくにんしたいときは、置換ちかんpermutation定義ていぎもどる。
  • 具体的ぐたいてき数値計算すうちけいさんでは、n! こう直接ちょくせつ展開てんかいするより、れいおおぎょうrowれつcolumnでの余因子展開よいんしてんかいcofactor expansion、または行基本変形ぎょうきほんへんけいelementary row operationえらぶ。

9どこまで成立せいりつするか

この講義こうぎでは、成分せいぶん実数じっすうまたは複素数ふくそすうである n×n 行列ぎょうれつmatrixあつかった。正方行列せいほうぎょうれつでない場合ばあい各行かくぎょう各列かくれつから 1 ずつえらんで完全かんぜん置換ちかんpermutationつくれないため、ここでの行列式ぎょうれつしきdeterminant定義ていぎされない。

また、この講義こうぎ証明しょうめい実数じっすう複素数ふくそすう通常つうじょう計算けいさん前提ぜんていにしている。抽象代数ちゅうしょうだいすうあつかうより一般いっぱん数体系すうたいけいではおなしき使つかえる場合ばあいもあるが、この時点じてん線型代数せんけいだいすうlinear algebraでは必要ひつようない。

10最終形さいしゅうけい

[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"boxed\")")]detA=σSnsgn(σ)a1σ(1)a2σ(2)anσ(n)
[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"boxed\")")]detI=1,det(AB)=detAdetB
[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"boxed\")")]multilinearityalternation+normalizationdeterminethedeterminant[PARSE ERROR: Undefined("RBrace")]

11一言ひとことでいうと

  • 置換ちかんpermutationは、行列式ぎょうれつしきdeterminant各項かくこうで「各行かくぎょう各列かくれつから 1 ずつえらぶ」ことを記録きろくする。
  • 符号ふごうsignは、その選択せんたくorientationたもつか反転はんてんするかを記録きろくする。
  • この定義ていぎから、多重線型性たじゅうせんけいせいmultilinearity交代性こうたいせいalternation計算規則けいさんきそくせき公式こうしきみちびかれる。

12演習えんしゅうリンク

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