一次漸化式
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1導入
この講義では、定数係数の一次線型漸化式を、平衡点の減算によって等比数列へ帰着する方法を説明する。
a_{n+1}=pa_n+q は、一般には等差数列でも等比数列でもない。定数項 q の消去と、例外 p=1 の分離が解法の要点である。
2用語と定義
この講義で扱う定数係数一次線型漸化式とは、
a_{n+1}=pa_n+q
の形をした漸化式である。ここで p,q は定数であり、この講義では n\geq1、初期値 a_1 を採用する。q=0 の場合は同次であり、q\ne0 の場合は非同次である。x\mapsto px+q は q\ne0 のときアフィン写像であるが、列に作用する方程式 (E-pI)a=q\mathbf1 は線型作用素による非同次方程式として表現される。
平衡点 とは、
\alpha=p\alpha+q
を満たす値 \alpha である。p\ne1 の場合、
\alpha=\frac{q}{1-p}
が一意に存在する。p=1,\ q\ne0 の場合、平衡点は存在しない。p=1,\ q=0 の場合、すべての値が平衡点である。
3方針
まず p=1 と p\ne1 を区別する。p=1 の場合、
a_{n+1}-a_n=q
であるため、(a_n) は等差数列である。p\ne1 の場合、平衡点 \alpha が一意に存在するため、偏差列 a_n-\alpha を導入する。
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4直感的な説明
4.11. 平衡点を減算する理由
平衡点は、更新写像 x\mapsto px+q によって不変な値である。p\ne1 の場合、この点は一意に存在する。a_n ではなく平衡点からの偏差を対象とすることにより、更新則を単純化できる。
4.22. 偏差列の等比性
平衡点からの偏差は、添字が 1 増加するごとに p 倍される。したがって、p\ne1 の一次漸化式は偏差列の等比性によって解決できる。p=1 の場合には、前進差分が定数となる。
5厳密な説明
5.1命題 1:p\ne1 の場合
仮定:n\geq1 において a_{n+1}=pa_n+q、p\ne1 とし、初期値を a_1 とする。
結論:\alpha=\dfrac{q}{1-p} と定義すると、
\boxed{a_n=\alpha+(a_1-\alpha)p^{n-1}}
である。
証明:
a_{n+1}=pa_n+q
を対象とする。\alpha を
\alpha=p\alpha+q
を満たす定数とする。
ここで
b_n:=a_n-\alpha
と定義すると、
b_{n+1}=a_{n+1}-\alpha
である。元の漸化式を代入すると、
b_{n+1}=pa_n+q-\alpha
である。さらに \alpha=p\alpha+q より q=\alpha-p\alpha であるから、
b_{n+1}=pa_n+\alpha-p\alpha-\alpha=p(a_n-\alpha)=pb_n
となる。したがって b_n は等比数列で、
b_n=b_1p^{n-1}
である。b_1=a_1-\alpha であるから、
\boxed{a_n=\alpha+(a_1-\alpha)p^{n-1}}
を得る。
5.2命題 2:p=1 の場合
仮定:n\geq1 において a_{n+1}=pa_n+q、p=1 とし、初期値を a_1 とする。
結論:
\boxed{a_n=a_1+(n-1)q}
である。
証明:p=1 であるから、元の漸化式は
a_{n+1}=a_n+q
である。したがって
a_{n+1}-a_n=q
である。N\geq2 とし、両辺を n=1,2,\ldots,N-1 について総和すると、
\sum_{n=1}^{N-1}(a_{n+1}-a_n)=\sum_{n=1}^{N-1}q
となる。左辺は望遠和となり、
a_N-a_1=(N-1)q
である。したがって、
a_N=a_1+(N-1)q
である。N=1 では公式が初期条件 a_1=a_1 と一致する。したがって、任意の n\geq1 について結論を得る。
6具体例
具体例として、
a_{n+1}=2a_n+3,\qquad a_1=1
を対象とする。平衡点 \alpha は
\alpha=2\alpha+3
より
\alpha=-3
である。この平衡点に基づき、
b_n=a_n+3
と定義すると、
b_{n+1}=a_{n+1}+3=2a_n+6=2(a_n+3)=2b_n
である。
したがって b_n は公比 2 の等比数列である。b_1=4 であるから、
b_n=4\cdot 2^{n-1}=2^{n+1}
である。したがって、
a_n=2^{n+1}-3
となる。
7数学的な解釈
7.1代数的な解釈
一次漸化式は、平衡点を原点とする座標へ移行することにより、定数項を消去して同次化できる。
この座標変換により、高等学校数学の標準解法を、非同次方程式の同次化という代数操作として整理できる。
7.2作用素による解釈
添字を 1 増加させるシフト作用素 E を (Ea)_n=a_{n+1} と定義すると、一次漸化式
a_{n+1}=pa_n+q
は
(E-pI)a=q\mathbf 1
と表現できる。ここで \mathbf 1 はすべての項が 1 の定数列である。
この式は、線型作用素方程式
L a=y
の形である。ただし L=E-pI、y=q\mathbf 1 である。平衡点 \alpha の決定は、定数列 a_n=\alpha という特解の決定に対応する。実際、a_n=\alpha の場合、
(E-pI)a=(1-p)\alpha\mathbf 1
である。したがって p\ne1 のとき、(1-p)\alpha=q となるように \alpha を選択すれば、a_n=\alpha は非同次方程式の特解である。p=1,\ q\ne0 のときは定数列の特解がないため、\Delta a=q という差分方程式として処理する。
続いて b_n=a_n-\alpha と定義すると、b は
(E-pI)b=0
を満たす。この作用素の核は、添字領域において b_{n+1}=pb_n を満たす等比数列の全体である。
7.3線形代数的な解釈
a_{n+1}=pa_n+q は線形写像ではなくアフィン変換である。定数座標 1 を付加すると、
\begin{pmatrix}
a_{n+1}\\
1
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
p & q\\
0 & 1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
a_n\\
1
\end{pmatrix}
と表現でき、2 次元の線形変換へ埋め込まれる。
このとき
\begin{pmatrix}
\alpha\\
1
\end{pmatrix}
が
\begin{pmatrix}
p & q\\
0 & 1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\alpha\\
1
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
\alpha\\
1
\end{pmatrix}
を満たす条件は、\alpha=p\alpha+q と同値である。したがって、平衡点が存在する場合、(\alpha,1)^\mathsf T は固有値 1 に属する固有ベクトルである。
平衡点の減算は、座標原点を不動点へ移動し、偏差座標における変換を単純化する操作である。
7.4解析学的な解釈
a_{n+1}-a_n を離散的な変化量と解釈すると、一次漸化式は微分方程式
y'=cy+d
の離散的対応物である。いずれも平衡点の減算によって同次化できるが、離散系と連続系の解公式は区別される。
この対応により、離散系と連続系における平衡点近傍の構造を比較できる。
8成立範囲
平衡点の減算は、a_{n+1}=pa_n+q かつ p\ne1 の場合に有効である。p=1 では定数差分を総和する。非線形漸化式または変数係数漸化式には、これらの命題を変更せずに適用することはできない。
9基本公式
p\ne1 のとき:
\boxed{\alpha=\frac{q}{1-p}}
\boxed{b_n:=a_n-\alpha \ \Rightarrow\ b_{n+1}=pb_n}
\boxed{a_n=\alpha+(a_1-\alpha)p^{n-1}}
p=1 のとき:
\boxed{a_n=a_1+(n-1)q}
10要約
- 一次漸化式では、まず p=1 と p\ne1 を区別する。
- p\ne1 の場合、平衡点を減算して等比数列へ帰着する。
- p=1 の場合、定数差分を総和して等差数列として処理する。
11関連リンク
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