数列と漸化式
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1導入
数列は、自然数の添字に従って各項を指定したものである。全項を添字から直接計算する明示式と、既知の項から後続項を定める漸化式は、同一の数列を記述する二つの基本方式である。本講義では両者の意味、初期条件の役割、代表例を整理し、後続講義の解法へ接続する。
2数列と添字
実数列 (a_n)_{n\geq1} とは、各整数 n\geq1 に実数 a_n を対応させる関数である。a_n を第 n 項、a_1 を初項という。本講義では、特記しない限り添字を n=1,2,3,\ldots から開始する。したがって、a_{n+1}=F(n,a_n) という更新形の式を「すべての n\geq1 について」課すと、F が定義される範囲で a_2,a_3,\ldots を順次規定する。
開始添字を 0 とする規約も可能であるが、その場合は初項が a_0 となり、例えば a_1r^{n-1} に対応する式は a_0r^n となる。異なる規約を混用してはならない。
3明示式と漸化式
明示式は、例えば
a_n=2n+1\qquad(n\geq1)
のように、n から a_n を直接指定する。これに対し、漸化式(再帰式)は
a_{n+1}=a_n+2\qquad(n\geq1),\qquad a_1=3
のように、項の間の関係と開始値を指定する。この二つは同じ数列 3,5,7,\ldots を表す。明示式は特定の項の計算に適し、漸化式は隣接項の変化や生成過程の表現に適する。
4初期条件と一意決定
漸化式だけでは数列が一意に定まらない場合がある。例えば
a_{n+1}=2a_n
は、a_1=1 なら 1,2,4,\ldots を、a_1=3 なら 3,6,12,\ldots を生成する。a_1 の指定が必要である。
より一般に、関数 F に対する一階漸化式
a_{n+1}=F(n,a_n)\qquad(n\geq1)
と初期条件 a_1=c\in\mathbb R が与えられ、F:\mathbb N_{\geq1}\times\mathbb R\to\mathbb R が各入力に一つの実数を対応させる関数であれば、実数列は一意に決定される。実際、a_1 から a_2=F(1,a_1) が定まり、同様に各項から次項が定まるためである。
a_{n+2} を a_{n+1},a_n から定める二階漸化式では、通常は連続する二つの初期値が必要となる。例えば
a_{n+2}=a_{n+1}+a_n\qquad(n\geq1),\qquad a_1=1,\quad a_2=1
は 1,1,2,3,5,\ldots を一意に生成する。一般に、G:\mathbb N_{\geq1}\times\mathbb R^k\to\mathbb R による k 階漸化式
a_{n+k}=G(n,a_n,a_{n+1},\ldots,a_{n+k-1})\qquad(n\geq1)
では、最高添字の項が直前の k 項から一意に更新されるため、連続する k 個の初期値 a_1,\ldots,a_k を指定すれば実数列が一意に決定される。
5等差数列と等比数列
一定の加法的変化は等差数列を与える。公差 d に対し、
a_{n+1}=a_n+d,\qquad a_n=a_1+(n-1)d
である。一定の乗法的変化は等比数列を与える。公比 r に対し、
a_{n+1}=ra_n,\qquad a_n=a_1r^{n-1}
である。前者では差 a_{n+1}-a_n、後者では乗数を検査する。a_n=0 では比 a_{n+1}/a_n が定義されないため、等比性は除算せず a_{n+1}=ra_n によって判定する。一般項と有限和の証明および例外処理は「等差数列と等比数列」で扱う。
data/lecture/math/sequence/arithmetic-and-geometric-sequences.lecture.n.md
6一次漸化式の基本例
定数 p,q に対する
a_{n+1}=pa_n+q
を考える。p=1 なら a_{n+1}=a_n+q であり、等差数列である。p\ne1 なら、平衡点
\alpha=\frac{q}{1-p}
は \alpha=p\alpha+q を満たす。すなわち、\alpha は更新写像 x\mapsto px+q の固定点である。b_n:=a_n-\alpha と置けば
b_{n+1}=pb_n
となり、平衡点からの偏差は等比数列である。したがって
a_n=\alpha+(a_1-\alpha)p^{n-1}
を得る。詳細な導出、p の値による挙動、具体例は「一次漸化式」で扱う。
data/lecture/math/sequence/first-order-recurrences.lecture.n.md
7解法を選択する観点
- 差が一定なら等差数列として扱う。
- 同一の乗数で更新されるなら等比数列として扱う。
- a_{n+1}=pa_n+q では、平衡点を減じて等比型へ変換する。
- 複数の過去項を含む場合、階数と係数の構造を確認し、特性方程式等の適用可能性を検討する。
- 添字の移動や差分を統一的に扱う場合、シフト作用素を使用する。
各型の識別と解法選択は「漸化式の型と解法」、シフト作用素 E と差分作用素 \Delta=E-I による記述は「シフト作用素と漸化式」で展開する。
data/lecture/math/sequence/recurrence-types-and-strategies.lecture.n.md
data/lecture/math/sequence/shift-operators-and-recurrences.lecture.n.md
8適用上の注意
有限個の提示項だけから無限数列の規則を一意に推定することはできない。同じ有限個の項に一致し、その後で異なる数列を無数に構成できるためである。また、漸化式が分数や平方根を含む場合、右辺が各段階で定義されるかを確認する必要がある。形式的な更新規則と初期条件があっても、指定した数の範囲内で後続項が常に存在するとは限らない。
9要約
- 数列 (a_n)_{n\geq1} は、各整数 n\geq1 に項 a_n を対応させる関数である。
- 明示式は a_n を添字から直接指定し、漸化式は既知の項から後続項を指定する。
- 漸化式による一意決定には、階数に応じた初期条件と、各更新値の一意な定義が必要である。
- 等差型、等比型、平衡点による変換が一次漸化式の基本となる。
10関連講義
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data/lecture/math/sequence/shift-operators-and-recurrences.lecture.n.md
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11演習
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