漸化式の類型と解法方針
mathsequencerecurrenceshift-operatorexam-strategylecture
1導入
漸化式の解法は、公式の選択ではなく、依存する過去の項数と式の構造の識別から開始する。本講義では、まず階数と線型性を定義し、その後に各類型を単純な数列または作用素方程式へ帰着する。
2分類用語
a_{n+k} を a_n,\ldots,a_{n+k-1} から定める漸化式で、実際に必要な最大の添字差を階数という。例えば a_{n+1}=pa_n+q は 1 階である。a_{n+2}=sa_{n+1}+ta_n は t\ne0 のとき 2 階であり、t=0 なら 1 階へ低下する。
線型漸化式とは、未知列の各シフトの線型結合として表現され、係数と右辺が未知列に依存しない漸化式である。未知項どうしの積、冪、または未知項の非線型関数を含むものは線型ではない。定数係数 c_j に対する
c_0a_n+c_1a_{n+1}+\cdots+c_ka_{n+k}=f(n)
が標準例である。c_k\ne0 なら、添字が増加する方向について k 階である。f=0 を同次、f\ne0 を非同次という。シフト作用素 (Ea)_n=a_{n+1} を使用すれば、この式は P(E)a=f と表現できる。
3判定手順
| 構造 | 導入量 | 帰着先 |
| a_{n+1}-a_n=f(n) | \Delta a_n | 有限和 |
| a_{n+1}=ra_n | そのまま | 等比数列 |
| a_{n+1}=pa_n+q | a_n-\alpha | 等比数列 |
| a_{n+1}=pa_n+f(n) | a_n/p^{n-1} | 差分型 |
| a_{n+2}-a_{n+1}=r(a_{n+1}-a_n) | b_n=a_{n+1}-a_n | 等比数列 |
| 部分和 S_n を含む | S_{n+1}-S_n=a_{n+1} | S_n の消去 |
| a_{n+1}=r_na_n | 有限積 | 積型 |
| a_{n+1}^{-1}=a_n^{-1}+d | b_n=1/a_n | 等差数列 |
| a_{n+1}=\dfrac{Aa_n+B}{Ca_n+D} | 固定点との交比 | 等比数列 |
| 定数係数高階線型 | P(E) | 特性多項式 |
| 複数状態の線型系 | 状態ベクトル | 行列反復 |
| 合同・不等式 | 剰余・不変集合 | 性質の帰納法 |
4命題 1:差分の総和
n\geq1 で a_{n+1}-a_n=f(n) が成立するなら、
\boxed{a_n=a_1+\sum_{k=1}^{n-1}f(k)}
が成立する。n=1 では空和を 0 とする。n\geq2 では仮定を k=1,\ldots,n-1 について総和すると、左辺が望遠和 a_n-a_1 となるため、結論を得る。f(n)=d は等差数列を与える。
5命題 2:一次非同次型
a_{n+1}=pa_n+q とする。p=1 なら命題 1 により
a_n=a_1+(n-1)q
である。p\ne1 なら平衡点 \alpha=q/(1-p) を定義し、b_n=a_n-\alpha とする。\alpha=p\alpha+q より
b_{n+1}=pa_n+q-\alpha=p(a_n-\alpha)=pb_n.
したがって、
\boxed{a_n=\alpha+(a_1-\alpha)p^{n-1}}
が成立する。p=1 の分離は、零による除算を回避するために必須である。
6命題 3:変化係数法
p\ne0 かつ a_{n+1}=pa_n+f(n) とする。b_n=a_n/p^{n-1} と定義すると、
b_{n+1}-b_n=\frac{f(n)}{p^n}.
命題 1 を適用して、
\boxed{a_n=p^{n-1}\left(a_1+\sum_{k=1}^{n-1}\frac{f(k)}{p^k}\right)}
を得る。p=0 では a_{n+1}=f(n) が直接 a_2,a_3,\ldots を決定するため、別途処理する。
7命題 4:階差数列
a_{n+2}-a_{n+1}=r(a_{n+1}-a_n) とし、b_n=a_{n+1}-a_n と定義する。すると b_{n+1}=rb_n であるから、b_n=(a_2-a_1)r^{n-1} である。命題 1 により、
a_n=a_1+(a_2-a_1)\sum_{k=0}^{n-2}r^k
となる。r=1 では和が n-1、r\ne1 では (1-r^{n-1})/(1-r) である。
8命題 5:定数係数二階線型型
a_{n+2}-sa_{n+1}-ta_n=0
を体 K 上で考察する。t=0 なら階数が低下する。特に s=t=0 なら a_{n+2}=0 であり、a_1,a_2 は任意、n\geq3 では a_n=0 である。以下、t\ne0 とする。特性多項式を \chi(x)=x^2-sx-t とする。\chi が分解する拡大体 L で相異なる根 \alpha,\beta をもつなら、L 値のすべての解は
\boxed{a_n=A\alpha^{n-1}+B\beta^{n-1}}
である。実際、x=\alpha,\beta を代入すれば各列が漸化式を満たす。また、a_1,a_2 を一致させる A,B は一意に存在する。差を取った解は初めの 2 項が零であり、漸化式による帰納法で全項が零となるため、これが全解である。
\chi が非零の重根 \alpha をもつなら、全解は
\boxed{a_n=(A+B(n-1))\alpha^{n-1}}
である。これは (E-\alpha I)^2 を \alpha^{n-1} と (n-1)\alpha^{n-1} に作用させて零となることを直接計算し、同じ初期値一意性を用いて証明できる。
9高階と状態ベクトル
k 階の定数係数同次線型漸化式は P(E)a=0 と表現できる。非零の特性根 \lambda の重複度が m なら、\lambda^n,n\lambda^n,\ldots,n^{m-1}\lambda^n に対応する解が現れる。零根は階数の低下または有限初期部分に関係するため、原式と初期値から処理する。完全な結論には P の分解体を指定する必要がある。
また、k 階の定数係数同次線型漸化式は v_n=(a_{n+k-1},\ldots,a_n)^\mathsf T を導入して v_{n+1}=Mv_n と 1 階の行列漸化式へ変換できる。この操作は階数を消去するのではなく、過去 k 項を一つの状態に統合する。
10追加類型
部分和 S_n=\sum_{j=1}^n a_j を含む式では、n+1 の式と n の式の差を形成し、S_{n+1}-S_n=a_{n+1} によって部分和を消去する。
積型 a_{n+1}=r_na_n は a_n=a_1\prod_{j=1}^{n-1}r_j となる。逆数型 1/a_{n+1}=1/a_n+d は、すべての対象項が非零であるとき b_n=1/a_n により等差型へ帰着する。
メビウス型 T(x)=(Ax+B)/(Cx+D) で AD-BC\ne0 とし、相異なる有限固定点 \alpha,\beta があり、分母および a_n-\beta が非零であるとする。このとき、ある定数 \rho により
\frac{T(x)-\alpha}{T(x)-\beta}=\rho\frac{x-\alpha}{x-\beta}
が成立するため、z_n=(a_n-\alpha)/(a_n-\beta) は等比数列となる。
線型連立 w_{n+1}=Mw_n は状態ベクトルの行列反復である。対称二変数系
x_{n+1}=ax_n+by_n,\qquad y_{n+1}=bx_n+ay_n
では、u_n=x_n+y_n、v_n=x_n-y_n により u_{n+1}=(a+b)u_n、v_{n+1}=(a-b)v_n と分離できる。
整数列で q_n\in\mathbb Z かつ a_{n+1}=a_{n-1}+q_na_n が成立するなら、
\gcd(a_{n+1},a_n)=\gcd(a_{n-1}+q_na_n,a_n)=\gcd(a_{n-1},a_n)
である。これは \gcd(x+qy,y)=\gcd(x,y) による隣接最大公約数の不変性である。
11性質を求める問題
一般項が不要な場合もある。整数係数の漸化式を法 m で縮約すれば、有限個の剰余状態を解析できる。不等式や区間不変性は、初期条件を確認し、a_n の性質から更新式によって a_{n+1} の性質を導く帰納法で証明する。
極限を問う問題では、固定点を候補とするだけでは収束の証明にならない。極限、連続性、単調性、有界性を導入した後続講義で厳密に扱う。
12適用範囲
比を使用する判定には分母の非零性、変化係数法には p\ne0、平衡点法には p\ne1 が必要である。非線型漸化式では、逆数、対数、固定点からの差の比等の変換が有効な場合があるが、変換の定義域と逆変換可能性を個別に確認する必要がある。
13関連講義
data/lecture/math/sequence/sequences-and-recurrences.lecture.n.md
data/lecture/math/sequence/arithmetic-and-geometric-sequences.lecture.n.md
data/lecture/math/sequence/shift-operators-and-recurrences.lecture.n.md
data/lecture/math/sequence/first-order-recurrences.lecture.n.md
data/lecture/math/sequence/difference-equation-basics.lecture.n.md
data/lecture/math/sequence/limits-of-sequences.lecture.n.md
data/lecture/math/linear-operator/polynomial-operators-and-eigenvalue-problems.lecture.n.md
data/exercise/math/sequence/recurrence-types-and-strategies.exercise.n.md