対角化・Jordan 形と連立系
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導入
このページの核心は、\boldsymbol{x}'=A\boldsymbol{x} を基底変換により独立な指数関数へ分解し、対角化不能な場合には Jordan 形で多項式因子を管理することである。
対角化可能な場合
A=PDP^{-1} なら
e^{At}=Pe^{Dt}P^{-1}
である。D が対角行列であるため、各固有方向は e^{\lambda t} により時間発展する。これは連立系を独立な 1 次方程式へ分解することに対応する。
この変形の意味は、状態 \boldsymbol{x} を固有基底で表現しなおすことである。\boldsymbol{x}=P\boldsymbol{z} とおくと、
P\boldsymbol{z}'=AP\boldsymbol{z}
であり、P^{-1}AP=D より
\boldsymbol{z}'=D\boldsymbol{z}
を得る。つまり対角化は、方程式を成分ごとに独立な z_i'=\lambda_i z_i へ分解する基底変換である。
Jordan 形の場合
対角化不可能な場合でも、Jordan 標準形を用いれば時間発展を記述できる。たとえば
J=\begin{pmatrix}\lambda&1\\0&\lambda\end{pmatrix}
=\lambda I+N,\qquad N^2=0
なら
e^{Jt}=e^{\lambda t}e^{Nt}
=e^{\lambda t}(I+tN)
である。したがって解には t e^{\lambda t} のような多項式因子が伴う。
具体例
まず対角化可能な例として
A=\begin{pmatrix}2&0\\0&-1\end{pmatrix}
を考える。この場合はすでに対角行列であるため、
\boldsymbol{x}(t)=
\begin{pmatrix}
e^{2t}&0\\
0&e^{-t}
\end{pmatrix}
\boldsymbol{x}(0)
である。第 1 成分は指数増加し、第 2 成分は指数減衰する。固有値の符号が時間発展を直接決定している。
A=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}
では
e^{At}=e^t
\begin{pmatrix}
1&t\\
0&1
\end{pmatrix}
である。第 2 成分が第 1 成分へ多項式的に影響する。
この Jordan 例では、固有値は 1 個だけだが、独立な固有方向が 2 本そろわない。その不足が t e^t の多項式因子として時間発展に現れる。
どこまで成り立つか
Jordan 形は理論的な分類として重要である。一方、数値計算では Jordan 形は不安定になりやすく、Schur 分解などが使用されることが多い。このページでは理論的構造に焦点を置く。
また、A が時間に依存する \boldsymbol{x}'=A(t)\boldsymbol{x} では、一般に e^{\int A(t)\,dt} と単純に表現できない。異なる時刻の行列が可換とは限らないためである。このページの議論は定数行列 A を前提にする。