1. 固有ベクトルを並べる
一次独立な固有ベクトル v_1,\dots,v_n があり、それぞれの固有値を \lambda_1,\dots,\lambda_n とする。
このとき
P=\begin{pmatrix}v_1&\cdots&v_n\end{pmatrix}, \qquad D=\operatorname{diag}(\lambda_1,\dots,\lambda_n)
とおけば
AP=PD
である。なぜなら、P の第 j 列は v_j で、AP の第 j 列は Av_j=\lambda_j v_j、また PD の第 j 列も \lambda_j v_j となるためである。したがって P が正則なら
P^{-1}AP=D
となる。
たとえば
A=
\begin{pmatrix}
3&1\\
0&2
\end{pmatrix}
では、\lambda=3 の固有ベクトルとして v_1=\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}、\lambda=2 の固有ベクトルとして v_2=\begin{pmatrix}-1\\1\end{pmatrix} を取れる。したがって
P=
\begin{pmatrix}
1&-1\\
0&1
\end{pmatrix},
\qquad
D=
\begin{pmatrix}
3&0\\
0&2
\end{pmatrix}
と置くと、
P^{-1}AP=D
である。この具体例で変わっているのは座標軸であり、線型変換そのものではない。固有方向を座標軸に選ぶと、変換は「第 1 軸を 3 倍、第 2 軸を 2 倍」という対角行列として読める。
2. 対角化の条件
行列 A が対角化可能であるためには、空間の次元だけ一次独立な固有ベクトルを確保できることが必要である。
固有値がすべて異なれば、その固有ベクトルは自動的に一次独立なので、対角化できる。
より本質的には、
A\text{ が対角化可能}\iff V\text{ が固有基底をもつ}
である。特性多項式が対象の体の上で一次式に分解するとき、各固有値 \lambda について
\mathrm{GM}(\lambda)=\mathrm{AM}(\lambda)
が全て成立することと、A が対角化可能であることは同値である。固有値が全て異なることは十分条件であり、必要条件ではない。
3. 対角化の利点
対角化できると
A^n=PD^nP^{-1}
となり、行列の冪や反復が扱いやすくなる。D^n は対角成分を各自 n 乗するだけで済むためである。
さらに、連立微分方程式
x'(t)=Ax(t)
では
x(t)=e^{tA}x(0)
を考察する。A=PDP^{-1} なら
e^{tA}=Pe^{tD}P^{-1}
となり、e^{tD} は対角成分 e^{t\lambda_i} を並べるだけで計算できる。したがって対角化は、高い冪だけでなく連立微分方程式の解析にも有効である。