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最小多項式の基本md f0c819a
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最小多項式の基本
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導入
この講義で重要なのは、最小多項式は、行列が満たす代数的関係を最小限に記録する多項式であるということである。
固有値は行列の情報を要約するが、それだけでは対角化可能性を完全には判定できない。最小多項式を導入すると、同じ固有値を持つ行列の差異を、重根の有無として確認できる。
用語と定義
最小多項式 とは、正方行列 A に対して
m_A(A)=0
を満たす零でない多項式のうち、次数が最小で、最高次係数が 1 であるものをいう。
特性多項式を
\chi_A(t)=\det(tI-A)
とする。ケーリー・ハミルトンの定理により
\chi_A(A)=0
である。したがって最小多項式は存在し、特性多項式を割る。
直感的な説明
数 \lambda について (t-\lambda) が消去するのは、t=\lambda という条件である。行列 A について (A-\lambda I) が零になるわけではない。しかし、適切な多項式を組み合わせると、行列全体を零行列にできる。
最小多項式は、そのために必要な最短の式である。対角化可能な行列では、固有値ごとに 1 回ずつ因子を用意すれば十分である。対角化できない場合は、同じ因子が複数回必要になる。
厳密な説明
1. 特性多項式との関係
最小多項式 m_A(t) は特性多項式 \chi_A(t) を割る。
m_A(t)\mid \chi_A(t)
したがって m_A(t) の根は A の固有値であり、固有値は m_A(t) の根として出現する。
2. 対角化可能性との関係
体 K 上で A の最小多項式が
m_A(t)=\prod_{i=1}^r(t-\lambda_i)
のように相異なる一次因子の積に分解されるなら、A は対角化可能である。逆も成立する。
\boxed{A\text{ が対角化可能}\iff m_A(t)\text{ が重根をもたない一次因子の積}}
この判定は、固有値の種類だけでなく、最小多項式に重複が必要かどうかを確認する方法である。
具体例
1. 対角行列
A=\begin{pmatrix}
2&0\\
0&3
\end{pmatrix}
では
(A-2I)(A-3I)=0
である。したがって
m_A(t)=(t-2)(t-3)
である。
2. ジョルダンブロック
B=\begin{pmatrix}
1&1\\
0&1
\end{pmatrix}
とする。このとき
B-I=\begin{pmatrix}
0&1\\
0&0
\end{pmatrix}
は零行列ではないが、
(B-I)^2=0
である。したがって
m_B(t)=(t-1)^2
である。重根が現れるため、B は対角化可能ではない。
別の観点
最小多項式は、線型変換が生成する代数の関係式である。たとえば A^k を計算するとき、最小多項式が分かれば高次の冪を低次の冪へ還元できる。
判定基準
- 最小多項式は、m_A(A)=0 を満たす最小次数のモニック多項式である。
- 最小多項式は特性多項式を割る。
- 対角化可能性は、最小多項式が重根を持たないことと対応する。
- ジョルダン標準形では、最大のブロックサイズが最小多項式の指数に反映される。
どこまで成り立つか
一次因子への分解を用いる主張は、考察する体の上で多項式が分解することを前提にする。実数だけでは分解しない場合も、複素数へ拡張すると分解できることがある。
最終形
\boxed{m_A(A)=0}
\boxed{m_A(t)\mid \chi_A(t)}
\boxed{A\text{ diagonalizable}\iff m_A(t)\text{ has no repeated root}}
一言でいうと
- 最小多項式は、行列を零化する最短の関係式であり、対角化可能性を判定する道具である。