相平面と安定性
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導入
このページの核心は、二次元の連立系を相平面で表現し、平衡点の周囲の軌道を固有値で分類することである。
標準形
\boldsymbol{x}'=A\boldsymbol{x}
または非線型系 \boldsymbol{x}'=\boldsymbol{F}(\boldsymbol{x}) を扱う。非線型系では、まず平衡点を求め、その近傍で Jacobian による線型化を行う。
分類表
| 固有値 | 型 | 安定性 |
| \lambda_1,\lambda_2<0 の実数 | 安定結節点 | 漸近安定 |
| \lambda_1,\lambda_2>0 の実数 | 不安定結節点 | 不安定 |
| 符号が異なる実数 | 鞍点 | 不安定 |
| \alpha\pm i\beta,\ \alpha<0 | 安定焦点 | 回転しながら収束 |
| \alpha\pm i\beta,\ \alpha>0 | 不安定焦点 | 回転しながら発散 |
| \pm i\beta | 中心 | 線型系では中立 |
なぜこの方針を選ぶのか
行列指数関数は、固有値の実部により指数成長または指数減衰を与える。虚部は回転を与える。したがって相平面の形状は固有値から診断できる。
判定手順
相平面では、図を先に図示するのではなく、平衡点と線型化を先に確認する。
- \boldsymbol{F}(\boldsymbol{x})=\boldsymbol{0} を解き、平衡点を求める。
- 線型系なら係数行列 A、非線型系なら平衡点での Jacobian 行列 D\boldsymbol{F} を確認する。
- 固有値の実部と虚部から収束・発散・回転を判定する。
- 固有値の実部が 0 を含む場合は、線型化だけで結論を確定しない。
この順序を採用する理由は、相平面の軌道が局所的には線型写像の作用で近似されるためである。図示は結論の代用ではなく、固有値判定を視覚化する補助である。
具体例 1:結節点と鞍点
\boldsymbol{x}'=
\begin{pmatrix}
-1&0\\
0&-2
\end{pmatrix}
\boldsymbol{x}
では固有値は -1,-2 であり、安定結節点である。
\boldsymbol{x}'=
\begin{pmatrix}
0&1\\
1&0
\end{pmatrix}
\boldsymbol{x}
では固有値は 1,-1 であり、鞍点である。
鞍点では、一方の固有方向では原点へ接近し、もう一方の固有方向では原点から離脱する。したがって一部の特別な初期値を除き、平衡点は不安定である。
具体例 2:安定焦点
\boldsymbol{x}'=
\begin{pmatrix}
-1&-2\\
2&-1
\end{pmatrix}
\boldsymbol{x}
では固有値は -1\pm 2i である。実部が負であるため半径は指数的に減衰し、虚部が非零であるため軌道は回転する。したがって原点は安定焦点である。
この例では、固有値の実部と虚部が別々の役割を担当する。実部は原点へ接近するかを決定し、虚部は回転の有無を決定する。
具体例 3:非線型系を線型化する
\begin{cases}
x'=x-x^2,\\
y'=-y
\end{cases}\begin{cases}
x'=x-x^2,\\
y'=-y
\end{cases}
を考える。平衡点は (0,0) と (1,0) である。右辺を \boldsymbol{F}(x,y)=(x-x^2,-y) とおくと、
D\boldsymbol{F}(x,y)=
\begin{pmatrix}
1-2x&0\\
0&-1
\end{pmatrix}
である。(0,0) では固有値が 1,-1 なので鞍点である。(1,0) では固有値が -1,-1 なので安定結節点である。
この例の要点は、非線型系を直接全域で線型とみなすのではなく、各平衡点の近傍ごとに別々の線型近似を構成する点にある。
どこまで成り立つか
非線型系では、線型化は平衡点近傍の局所情報である。固有値の実部が 0 を含む場合、線型化だけでは判定できない。中心型に分類される線型化でも、非線型項により安定または不安定になる場合がある。