余因子展開と可逆性の判定
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導入
この講義で重要なのは、余因子展開は高次の行列式を低次の行列式へ分解する方法であり、可逆性の判定に直結するということである。
3×3 以上の行列式を暗算で処理しようとすると混乱しやすい。余因子展開では、1 行または 1 列を選択し、小行列式へ還元する。
用語と定義
小行列式 とは、A の第 i 行と第 j 列を除いて得られる行列の行列式である。
余因子 は
C_{ij}=(-1)^{i+j}M_{ij}
で定義される。ここで M_{ij} は小行列式である。
直感的な説明
余因子展開は、高次元の体積を、1 方向を基準にして低次元の断面へ分解する見方である。3 次元の体積を「底面積×高さ」として読むように、行列式でも 1 行または 1 列を選び、その成分を係数として低次の行列式を足し合わせる。
計算上は、0 が多い行や列を選ぶほど楽になる。0 の成分に対応する小行列式は寄与しないため、大きな行列式を少ない項に分解できる。
可逆性の判定では、行列式が 0 でないかだけを最終的に確認する。余因子展開はその値を計算する道具であり、行列式が体積の伸縮率を表すという直感は次のページで扱う。
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厳密な説明
第 i 行で展開すると
\det A=\sum_{j=1}^n a_{ij}C_{ij}
である。第 j 列で展開すると
\det A=\sum_{i=1}^n a_{ij}C_{ij}
である。符号 (-1)^{i+j} は、市松模様のように交互に変化する。
具体例
A=\begin{pmatrix}
1&0&2\\
3&1&0\\
0&4&1
\end{pmatrix}
を第一行で展開する。
\det A
=1\det\begin{pmatrix}1&0\\4&1\end{pmatrix}
-0\det\begin{pmatrix}3&0\\0&1\end{pmatrix}
+2\det\begin{pmatrix}3&1\\0&4\end{pmatrix}
したがって
\det A=1(1)+2(12)=25
である。\det A\ne0 なので A は可逆である。
可逆性との関係
A が n×n 行列のとき、
\boxed{A\text{ は可逆}\iff \det A\ne0}
である。行列式が 0 なら、列ベクトルが一次従属になり、空間の体積が 0 に潰れる。したがって入力を一意に復元できない。
よくある誤解
- 余因子展開で符号 (-1)^{i+j} を忘れてはならない。
- どの行・列で展開しても値は同じだが、計算量は大きく変化する。
- \det A=0 は計算失敗ではなく、可逆でないことを示す構造的な情報である。
どこまで成り立つか
余因子展開は任意の n×n 行列に適用できる。しかし大規模な行列では計算量が急増するため、実用上は行基本変形や数値的な分解を用いる。
最終形
\boxed{\det A=\sum_j a_{ij}C_{ij}}
\boxed{C_{ij}=(-1)^{i+j}M_{ij}}
\boxed{A\text{ は可逆}\iff \det A\ne0}