行列の基本演算
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導入
この講義で重要なのは、行列には行数と列数があり、演算はサイズ条件を満たすときだけ定義されるということである。
行列をいきなり線型写像として解釈すると、初学者は計算規則で混乱しやすい。まず数を長方形に並べた対象として確認し、足し算・スカラー倍・サイズ条件を固定する。
用語と定義
行列 とは、数を行と列に並べた対象である。m 行 n 列の行列を m\times n 行列という。
A=\begin{pmatrix}
a_{11}&a_{12}\\
a_{21}&a_{22}\\
a_{31}&a_{32}
\end{pmatrix}
は 3\times2 行列である。
行ベクトル は 1 行の行列であり、列ベクトル は 1 列の行列である。
直感的な説明
行列の和は、同じ位置にある成分どうしを加える操作である。座席表の同じ席を対応させるように、行番号と列番号が一致する成分だけを組み合わせる。
したがって、サイズが異なる行列は同じ位置どうしの対応が成立しない。演算が定義されない理由はここにある。
厳密な説明
A=(a_{ij})、B=(b_{ij}) を同じ m\times n 行列とする。このとき
A+B=(a_{ij}+b_{ij})
で定義する。また
A-B=(a_{ij}-b_{ij})
である。スカラー c に対して
cA=(ca_{ij})
と定義する。行列が等しいとは、サイズが同一で、すべての対応する成分が等しいことである。
具体例
A=\begin{pmatrix}1&2\\3&4\end{pmatrix},\qquad
B=\begin{pmatrix}5&0\\-1&2\end{pmatrix}
なら
A+B=\begin{pmatrix}6&2\\2&6\end{pmatrix},\qquad
2A=\begin{pmatrix}2&4\\6&8\end{pmatrix}
である。一方、2\times2 行列と 2\times3 行列の和は定義されない。
よくある誤解
- サイズが異なる行列を成分が似ているという理由で加算してはならない。
- 行ベクトルと列ベクトルは成分数が同一であってもサイズが異なる。
- 正方行列だけが行列ではない。長方行列も線型代数の主要対象である。
どこまで成り立つか
和とスカラー倍は成分ごとの演算である。行列の積は単なる成分ごとの積ではないため、別に定義を確認する必要がある。
最終形
\boxed{A+B=(a_{ij}+b_{ij})\quad\text{同じサイズのとき}}
\boxed{cA=(ca_{ij})}
\boxed{\text{行列演算では最初にサイズを確認する}}