ベクトルの基本演算
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導入
この講義で重要なのは、ベクトルを矢印としてだけでなく、成分を持つ計算対象として扱うことである。
線型代数では、ベクトルの和、差、スカラー倍、線型結合がすべての入口になる。図形的な意味だけでなく、成分ごとの計算として実行できることが必要である。
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用語と定義
ベクトル とは、複数の数を順序つきで並べた対象である。\mathbb R^n のベクトルは
v=\begin{pmatrix}v_1\\v_2\\ \vdots\\ v_n\end{pmatrix}
と表す。
零ベクトル とは、全成分が 0 のベクトルであり、加法の基準になる。
標準基底 とは、\mathbb R^n で 1 つの成分だけが 1、他が 0 のベクトルからなる基底である。
列ベクトル は成分を縦に並べたベクトルであり、行ベクトル は成分を横に並べたベクトルである。行列との積では形とサイズ条件が重要になる。
スカラー とは、ベクトルを拡大・縮小する係数である。ここでは実数を基本にする。
線型結合 とは、ベクトルにスカラーを掛けて加えた c_1v_1+\cdots+c_kv_k の形である。
方針
まず 2 次元で成分ごとの計算を確認し、そのあと n 次元へ拡張する。線型代数では、次元が増加しても規則は成分ごとのまま維持される。
直感的な説明
ベクトルの和は、移動を続けて実行することに対応する。スカラー倍は、同じ方向の移動量を変更することに対応する。
成分表示では、この操作を各座標で別々に実行する。したがって、ベクトル演算は複雑な規則ではなく、座標軸ごとの同型な計算である。
厳密な説明
u=(u_1,\dots,u_n)^T、v=(v_1,\dots,v_n)^T とする。ベクトルの和と差は
u+v=(u_1+v_1,\dots,u_n+v_n)^T
u-v=(u_1-v_1,\dots,u_n-v_n)^T
で定義する。スカラー c に対して
cu=(cu_1,\dots,cu_n)^T
である。この定義により、和とスカラー倍が同時に扱える。たとえば
c_1v_1+c_2v_2
は、2 本のベクトルを係数つきで合成した線型結合である。
具体例
u=(1,2)^T、v=(3,-1)^T とする。このとき
u+v=(4,1)^T,\qquad u-v=(-2,3)^T
である。また
2u-3v=2(1,2)^T-3(3,-1)^T=(-7,7)^T
となる。この計算では、第一成分と第二成分を独立に処理している。
よくある誤解
- ベクトルを点そのものと同一視しない。点は位置であり、ベクトルは移動量や成分を表す対象である。
- 次元が増加しても、和とスカラー倍の規則は成分ごとである。
- 線型結合は単なる足し算ではなく、係数を自由に選択して方向を合成する操作である。
どこまで成り立つか
ここでは実数をスカラーにした。スカラーを複素数にすると複素ベクトル空間になる。基本演算の形は同じだが、内積や角度では共役の扱いが必要になる。
最終形
\boxed{u+v=(u_1+v_1,\dots,u_n+v_n)^T}
\boxed{cu=(cu_1,\dots,cu_n)^T}
\boxed{c_1v_1+\cdots+c_kv_k\text{ が線型結合である}}
\boxed{v=v_1e_1+\cdots+v_ne_n\quad(\text{standard basis})}
一言でいうと
- ベクトルの基本演算は、成分ごとの計算として実行され、線型結合が後続の基底と階数の入口になる。