階段形と簡約階段形
mathlinear-algebraundergraduatelecture
導入
この講義で重要なのは、階段形は解を読むために行列を整理した形であり、pivot が本質的な変数と階数を示すということである。
掃き出し法では、行列をただ小さくするのではなく、主成分の位置を段階的に整理する。その整理後の形が階段形である。
用語と定義
主成分 とは、各行で左から最初に現れる非零成分である。
行階段形 とは、下の行へ進むほど主成分が右へ移動し、零行が下に集まる形である。
簡約行階段形 とは、各主成分が 1 で、その列の他の成分がすべて 0 になった形である。
直感的な説明
階段形では、主役になる変数が左から右へ順に現れる。pivot がある列は主変数の列であり、pivot がない列は自由変数の列になる。
このため、階段形は計算途中の形であると同時に、解の自由度を確認する表としても機能する。
線型変換として見ると、pivot は「入力方向のうち、出力側で独立に効いている方向」を示す印である。pivot のない列は、他の pivot 列の組み合わせで説明できる方向であり、そこに自由度が残る。
したがって階段形は、行列を見やすくする表計算ではなく、写像がどの方向を独立に保ち、どの方向を他の方向へ従属させるかを読むための形である。
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厳密な説明
たとえば
\begin{pmatrix}
1&2&0\\
0&1&3\\
0&0&0
\end{pmatrix}
は行階段形である。主成分は 1 列目と 2 列目にあるため、pivot の個数は 2 である。したがって階数は 2 である。
簡約行階段形では、さらに主成分列の他成分を 0 にする。たとえば
\begin{pmatrix}
1&0&-6\\
0&1&3\\
0&0&0
\end{pmatrix}
は簡約行階段形である。
具体例と矛盾の判定
拡大係数行列
\left(\begin{array}{cc|c}
1&2&5\\
0&1&1
\end{array}\right)\left(\begin{array}{cc|c}
1&2&5\\
0&1&1
\end{array}\right)
は階段形である。第二行から y=1 を得る。第一行へ代入して x+2=5、すなわち x=3 を得る。階段形は下から上へ解を戻す形である。
拡大係数行列では、最後の列だけに pivot が立つ場合に注意する。たとえば
\left(\begin{array}{cc|c}
1&2&3\\
0&0&1
\end{array}\right)\left(\begin{array}{cc|c}
1&2&3\\
0&0&1
\end{array}\right)
には行 0x+0y=1 が含まれる。これは 0=1 という矛盾なので、解は存在しない。階数で言えば、係数行列の階数は 1 だが、拡大係数行列の階数は 2 であり、
\operatorname{rank}(A)<\operatorname{rank}(A\mid b)
となる。この不一致が、右辺 b が列空間に入っていないことを表す。
よくある誤解
- pivot は任意の非零成分でよいわけではない。各行の左から最初の非零成分である。
- 階段形と簡約階段形は同一ではない。簡約では pivot 列の他成分も 0 にする。
- 階数は非零成分の個数ではなく、pivot の個数である。
どこまで成り立つか
行基本変形で得られる階段形は一意とは限らない。しかし簡約行階段形は一意である。階数や pivot の個数は、途中の操作の選択に依存しない。
最終形
\boxed{\text{rank}=\text{pivot の個数}}
\boxed{\text{pivot のない列が自由変数を与える}}