点とベクトルの違い
mathvectorgeometrylecture
導入
この講義で重要なのは、点は場所であり、ベクトルは移動量や差である、という区別を最初に固定することである。
座標を使うと、点もベクトルも (2,3) のように表示される。そのため両者を同一視しやすい。しかし意味は異なる。点は空間内の位置であり、ベクトルは点から点への変位である。
用語と定義
点 とは、空間の場所を表す対象である。
ベクトル とは、移動量や差を表す対象である。
位置ベクトル とは、原点 O から点 P へ向かうベクトル \overrightarrow{OP} である。
方針
まず「点どうしは加法しない」「点とベクトルは加法できる」「点どうしの差はベクトルである」という 3 規則を確認する。その後で位置ベクトルが原点の選択に依存することを確認する。
直感的な説明
点 P は場所である。ベクトル v は移動量である。したがって、点にベクトルを加える P+v は「点 P から v だけ移動した点」として解釈できる。
一方、点どうしを P+Q と加える操作には、基準なしでは自然な意味がない。これに対して Q-P は、「P から Q への移動量」としてベクトルを与える。
厳密な説明
点の集合を E、移動量のベクトル空間を V とする。点 P\in E とベクトル v\in V に対して、P+v は点である。また 2 点 P,Q\in E に対して、Q-P はベクトルである。
この構造をアフィン空間という。線形空間では原点が特別に指定されるが、アフィン空間では原点を選択する前の点の関係を扱う。
具体例
座標平面で P=(1,2)、Q=(4,6) とする。このとき
Q-P=(3,4)
は P から Q へのベクトルである。これは点ではなく移動量である。
原点 O=(0,0) を選択すれば、P の位置ベクトルは
\overrightarrow{OP}=(1,2)
である。同一の座標 (1,2) であっても、文脈により点を表す場合と、原点からのベクトルを表す場合がある。
よくある誤解
- 点とベクトルを同一視しない。座標が同形であっても意味が異なる。
- 点どうしの加法は基準なしには定義しない。
- 位置ベクトルは原点の選択に依存する。点どうしの差は原点を変更しても変化しない。
どこまで成り立つか
座標を選択すると、点もベクトルも数の組で表示できる。しかし、座標表示が似ていることと、対象が同一であることは別である。図形問題では、この区別が中点、重心、平行移動の理解を安定させる。
最終形
\boxed{\text{点}+\text{ベクトル}=\text{点}}
\boxed{\text{点}-\text{点}=\text{ベクトル}}
\boxed{\text{点}+\text{点}\ \text{は基準なしには定義しない}}
一言でいうと
- 点は場所、ベクトルは移動量であり、位置ベクトルは原点を選択して点をベクトルで表示したものである。