基底変換と相似-基本演習
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演習方針
基底変換で変わるのは、ベクトルそのものや線型写像そのものではなく、座標表示である。この演習では、古い基底での座標、新しい基底での座標、表現行列を区別して計算する。
確認問題:座標変換行列
\mathbb{R}^2 の標準基底を古い基底とする。新しい基底を
b_1=
\begin{pmatrix}
1\\
1
\end{pmatrix},
\qquad
b_2=
\begin{pmatrix}
1\\
-1
\end{pmatrix}
とする。ベクトル
x=
\begin{pmatrix}
3\\
1
\end{pmatrix}
の新基底に関する座標 [x]_{\mathrm{new}} を求めよ。
解答
まず、新しい基底ベクトルを列に並べる。
P=
\begin{pmatrix}
1&1\\
1&-1
\end{pmatrix}
この P は、新しい座標を古い座標へ戻す行列である。
[x]_{\mathrm{old}}=P[x]_{\mathrm{new}}
したがって、
\begin{pmatrix}
3\\
1
\end{pmatrix}
=
s
\begin{pmatrix}
1\\
1
\end{pmatrix}
+
t
\begin{pmatrix}
1\\
-1
\end{pmatrix}
を解けばよい。成分を比べると、
\begin{cases}
s+t=3,\\
s-t=1
\end{cases}\begin{cases}
s+t=3,\\
s-t=1
\end{cases}
である。2 式を足して 2s=4、したがって s=2 である。さらに s+t=3 から t=1 である。
\boxed{
[x]_{\mathrm{new}}=
\begin{pmatrix}
2\\
1
\end{pmatrix}
}
この問題で確認しているのは、座標が変わってもベクトルそのものは変わらないという点である。x は同じベクトルだが、基底を変えると数の組み合わせが変わる。
確認問題:相似変換
線型写像の古い基底での表現行列を
A_{\mathrm{old}}=
\begin{pmatrix}
2&1\\
0&3
\end{pmatrix}
とする。また、新しい基底から古い基底への座標変換行列を
P=
\begin{pmatrix}
1&1\\
1&-1
\end{pmatrix}
とする。新基底での表現行列
A_{\mathrm{new}}=P^{-1}A_{\mathrm{old}}P
を求めよ。
解答
まず P が可逆であることを確認する。ここでは
\det P
=
-2
\neq
0
なので、P^{-1} が存在する。したがって
P^{-1}
=
\begin{pmatrix}
\frac12&\frac12\\
\frac12&-\frac12
\end{pmatrix}
である。つぎに
A_{\mathrm{old}}P
=
\begin{pmatrix}
2&1\\
0&3
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1&1\\
1&-1
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
3&1\\
3&-3
\end{pmatrix}
である。したがって
A_{\mathrm{new}}
=
\begin{pmatrix}
\frac12&\frac12\\
\frac12&-\frac12
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
3&1\\
3&-3
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
3&-1\\
0&2
\end{pmatrix}
となる。
\boxed{
A_{\mathrm{new}}=
\begin{pmatrix}
3&-1\\
0&2
\end{pmatrix}
}
この問題では、左の P^{-1} と右の P の役割が重要である。右の P は新座標の入力を古座標へ戻し、A_{\mathrm{old}} は古座標で線型写像を適用し、左の P^{-1} は結果を新座標へ戻す。
確認問題:定義域と終域の基底を別々に変える
線型写像 T:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^3 の古い基底での表現行列を
A_{\mathrm{old}}=
\begin{pmatrix}
1&0\\
0&1\\
1&1
\end{pmatrix}
とする。定義域の座標変換行列を
P=
\begin{pmatrix}
1&1\\
0&1
\end{pmatrix}
とし、終域の座標変換行列を Q=I_3 とする。このとき
A_{\mathrm{new}}=Q^{-1}A_{\mathrm{old}}P
を求めよ。
解答
ここでは Q=I_3 なので、Q^{-1}=I_3 である。したがって
A_{\mathrm{new}}
=
A_{\mathrm{old}}P
を計算すればよい。
\begin{pmatrix}
1&0\\
0&1\\
1&1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1&1\\
0&1
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
1&1\\
0&1\\
1&2
\end{pmatrix}
したがって
\boxed{
A_{\mathrm{new}}
=
\begin{pmatrix}
1&1\\
0&1\\
1&2
\end{pmatrix}
}
長方行列では、相似という形ではなく Q^{-1}AP という形になる。定義域と終域の基底を別々に持つためである。
確認問題:相似で保存される量
前問の正方行列
A=
\begin{pmatrix}
2&1\\
0&3
\end{pmatrix},
\qquad
B=
\begin{pmatrix}
3&-1\\
0&2
\end{pmatrix}
について、トレース、行列式、固有値が一致することを確認せよ。
解答
まずトレースは
\operatorname{tr}(A)=2+3=5,
\qquad
\operatorname{tr}(B)=3+2=5
である。つぎに行列式は
\det A=2\cdot 3-0\cdot 1=6,
\qquad
\det B=3\cdot 2-0\cdot(-1)=6
である。さらに、どちらも上三角行列なので、固有値は対角成分から読める。
A:\ 2,3,
\qquad
B:\ 3,2
したがって、順序を除けば固有値は一致する。
この問題で見ているのは、相似が同じ線型写像の別表示であるという事実である。行列の成分は変わっても、基底に依存しない量は保存される。
確認問題:可逆性の確認
P=
\begin{pmatrix}
1&2\\
2&4
\end{pmatrix}
を座標変換行列として使えるか判定せよ。
解答
基底変換で使う P は、新しい基底ベクトルを列に並べた行列である。したがって、列が線型独立でなければならない。
ここでは第2列が第1列の 2 倍である。
\begin{pmatrix}
2\\
4
\end{pmatrix}
=
2
\begin{pmatrix}
1\\
2
\end{pmatrix}
したがって列は線型従属であり、基底にならない。実際、
\det P
=
1\cdot 4-2\cdot 2
=
0
である。逆行列の公式を使うなら \det P で割るため、この場合は 0 による除算になり、P^{-1} は存在しない。
\boxed{
P\text{ は座標変換行列として使えない}
}
この問題は、相似変換や基底変換で P^{-1} が出てくる理由を確認するものである。可逆でない行列は、座標の付け替えではなく、情報を潰す写像になる。
補充問題:失敗例と順序の確認
問題 6
b_1=\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix},
\qquad
b_2=\begin{pmatrix}2\\0\end{pmatrix}
は \mathbb R^2 の基底ではない。この理由を、座標変換行列の可逆性から説明せよ。
○
b_1,b_2 を列に並べると
P=
\begin{pmatrix}
1&2\\
0&0
\end{pmatrix}
である。この行列は第 2 行が零なので可逆ではない。したがって、座標からベクトルを一意に復元できず、b_1,b_2 は基底ではない。
この問題は、基底ではない組を使うと座標変換が壊れることを確認する。基底変換では、変換行列が可逆であることが前提である。
問題 7
A=\begin{pmatrix}2&1\\0&3\end{pmatrix},
\qquad
P=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}
とする。P^{-1}AP と PAP^{-1} を計算し、一般に順序を入れ替えてはいけないことを確認せよ。
○
P^{-1}=
\begin{pmatrix}1&-1\\0&1\end{pmatrix}
である。したがって
P^{-1}AP=
\begin{pmatrix}
2&0\\
0&3
\end{pmatrix}
である。一方、
PAP^{-1}=
\begin{pmatrix}
2&2\\
0&3
\end{pmatrix}
であり、同じ行列にはならない。
この問題は、相似変換の順序を確認するための失敗例である。P^{-1}AP と PAP^{-1} は記号が似ているが、基底の取り方に対する意味が逆になる。
まとめ
- 基底変換では、ベクトルそのものではなく座標表示が変わる。
- 相似変換 P^{-1}AP は、同じ線型写像を別の基底で表す操作である。
- 定義域と終域の基底を別々に変えるときは、Q^{-1}AP の形になる。
- P^{-1} を使う場面では、P が可逆であることを確認する。