二階線形 PDE の分類
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1導入
この講義では、二変数の二階線形 PDE を最高階微分から点ごとに分類し、特性方向と標準形を判定する方法を説明する。楕円型・放物型・双曲型という名前は典型的な平衡・拡散・伝播を予想する手掛かりになるが、型だけで存在・一意性・安定性を保証するものではない。
この判別量による三分類は独立変数が 2 個の場合を扱う。より多くの変数では、主係数行列の固有値の符号を数える一般化が必要になる。
2一般形と主部
領域 \Omega\subset\mathbb R^2 で、実数値の連続係数を持つ方程式
A u_{xx}+2B u_{xy}+C u_{yy}+D u_x+E u_y+F u=G
を考える。A,\ldots,F,G は (x,y) の既知関数であり、u やその微分には依存しない。このことが u に関する線形性を意味する。分類に使う主部は
A u_{xx}+2B u_{xy}+C u_{yy}
であり、主係数行列は
M(x,y)=
\begin{pmatrix}
A&B\\
B&C
\end{pmatrix}
である。D,E,F,G は解の具体形や適切性に影響するが、型は M だけで決まる。
3判別量と三分類
点 (x,y) で
\delta=B^2-AC=-\det M
と置く。M\ne0、すなわち A,B,C がすべて 0 ではない点では、次のように分類する。
| 判別条件 | 型 | M の符号構造 | 実特性方向 |
| \delta<0 | 楕円型 | 正定値または負定値 | なし |
| \delta=0 かつ M\ne0 | 放物型 | rank 1 の半正定値または半負定値 | 重複する 1 方向 |
| \delta>0 | 双曲型 | 不定値 | 異なる 2 方向 |
A=B=C=0 なら \delta=0 でも二階主部がなく、放物型とは呼べない。係数が変化する場合、これは領域全体ではなく各点での分類である。
4代表方程式の計算
Laplace 方程式
u_{xx}+u_{yy}=0
では A=C=1,B=0 なので \delta=-1<0 であり、楕円型である。
熱方程式を (x,t) の順で
u_t-\kappa u_{xx}=0,\qquad \kappa>0
と書くと、A=-\kappa,B=C=0 で \delta=0、M は rank 1 なので放物型である。u_t は一階項なので型の判定には入らないが、時間発展の向きを決める重要な項である。
波動方程式を
u_{tt}-c^2u_{xx}=0,\qquad c>0
と書くと、A=-c^2,B=0,C=1 なので \delta=c^2>0 であり、双曲型である。
5座標変換で型が保たれる理由
新しい座標関数 (\xi,\eta)=(\xi(x,y),\eta(x,y)) を C^2 級とし、その Jacobian 行列を J とする。\det J\ne0 の点では逆関数定理により局所座標として使え、新座標での主係数行列は
\widetilde M=J M J^{\mathsf T}
という合同変換を受ける。したがって
\det\widetilde M=(\det J)^2\det M
となり、\delta=-\det M の符号は変わらない。可変係数の方程式を変換すると座標の二階微分から低階項も生じるが、主部の型は非特異な座標変換で保たれる。特異な変換ではこの結論を使えない。
6特性曲線との関係
曲線 \phi(x,y)=\text{constant} に垂直な法線方向は、勾配 (\phi_x,\phi_y) で表せる。この曲線が主部に対して特性的である条件は
A\phi_x^2+2B\phi_x\phi_y+C\phi_y^2=0
である。接方向を (dx,dy) と書けば、同じ条件は同次式
A(dy)^2-2B\,dx\,dy+C(dx)^2=0
になる。この形は垂直な曲線も扱える。曲線を y=y(x) と書け、m=dy/dx とすれば法線は (-m,1) に比例するので、
A m^2-2Bm+C=0
を得る。A\ne0 なら、これは有限な傾き m の二次方程式であり、判別式は 4(B^2-AC)=4\delta である。A=0 では二次項が消え、B\ne0 なら一次式、B=0 なら定数式になるため、dx=0 の垂直方向を傾き m で表せない場合がある。そのときは同次式へ戻るか、x=x(y) の表示を使う。射影的な方向全体を数えれば、上の三分類と実特性方向の本数が一致する。
熱方程式では m=dt/dx=0 が重根なので、t=\text{constant} は二階主部に対する特性曲線である。それでも t=0 に 1 個の初期値を置いて前向き発展を考えられるのは、u_t が一階で残る放物型発展構造による。前講義の一階準線形 PDE における非特性条件と、この二階主部の特性条件を同じ規則として扱ってはならない。
data/lecture/math/partial-differential-equations/method-of-characteristics.lecture.n.md
7標準形への入口
一点では、非特異な線形座標変換と、必要なら方程式全体への -1 倍により、主部を次の形に正規化できる。
| 型 | 主部の標準形 |
| 楕円型 | u_{\xi\xi}+u_{\eta\eta} |
| 放物型 | u_{\xi\xi} |
| 双曲型 | u_{\xi\xi}-u_{\eta\eta}、または特性座標で u_{\xi\eta} |
可変係数の方程式を近傍全体で標準形へ移すには、係数の正則性、型が一定であること、局所座標の存在を別に確認する。大域的な標準化は自動的には従わない。
8型から予想できることとできないこと
型は問題設定と解法を選ぶ入口である。ただし次の対応は、代表的な追加仮定のもとで成立する。
| 型 | 典型像 | 必要になる追加条件の例 |
| 楕円型 | 境界値と内部平衡、maximum principle | 一様楕円性、低階係数の符号、領域と境界条件 |
| 放物型 | 前向き時間発展と平滑化 | 拡散係数の正の下限、時間方向、係数と初期境界条件 |
| 双曲型 | 有限速度の伝播と energy | 異なる実特性方向が保たれること、適切な時間面、係数の正則性 |
領域で一様楕円性を仮定するとは、領域全体で固定した \sigma\in\{1,-1\} と定数 0<\lambda_0\le\Lambda_0<\infty があり、すべての \zeta\in\mathbb R^2 に対して
\lambda_0|\zeta|^2\le \zeta^{\mathsf T}(\sigma M)\zeta\le\Lambda_0|\zeta|^2
が各点で成立することを意味する。これは固有値の符号を領域全体でそろえ、0 と無限大の両方から一様に隔てる条件である。このような一様性は、型ごとの評価を領域全体で使うときに重要である。
たとえば前向き熱方程式と後ろ向き熱方程式は主部の同じ放物型分類を持つが、安定性は同じではない。また楕円型というだけで、任意の境界条件が一意解を定めるとは限らない。初期条件・境界条件・適切性は、型とは別に問題全体で確認する。
data/lecture/math/partial-differential-equations/initial-and-boundary-value-problems.lecture.n.md
9反例または限界
係数が場所で変化する方程式では、領域全体で型が一定とは限らない。たとえば
y u_{xx}+u_{yy}=0
では A=y,B=0,C=1 なので \delta=-y である。したがって y>0 で楕円型、y<0 で双曲型、y=0 で rank 1 の放物型になる。y=0 は型変化線であり、一様性が失われるため、片側で使える評価や解法をそのまま横断的に適用できない。
10よくある誤り
- 2B u_{xy} という係数規約を確認せず、B^2-AC へ別の B を代入する。交差項を B u_{xy} と書く規約では、主係数行列の非対角成分は B/2 になる。
- \delta=0 だけを見て、A=B=C=0 の退化した式まで放物型と呼ぶ。
- 型を確認しただけで、境界条件、時間方向、係数の正則性を調べずに適切性を結論する。
- 一点での分類を領域全体へ広げ、型変化や一様性を見落とす。
11関連リンク
data/lecture/math/partial-differential-equations/heat-wave-and-laplace-equations.lecture.n.md