Green 関数の入口
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1導入
この講義では、線形 PDE の解を、点源に対する応答の重ね合わせとして構成する方法を説明する。Green 関数は時間発展問題にも使用されるが、その場合は時間変数と因果性も扱う必要がある。このページでは楕円型の境界値問題に範囲を限定する。
2用語と定義
Green 関数 は、線形微分演算子 L、領域、境界条件を固定したときの点源応答である。まず、斉次境界条件を課した L が可逆、すなわち各入力に対して解が一意に決まる場合を考える。点源の位置を \xi、観測位置を x とすると、x に作用する演算子について
L_xG(x,\xi)=\delta(x-\xi)
を満たし、x について指定された斉次境界条件も満たす。ここで \delta(x-\xi) は \xi にある点源を表し、通常の関数ではなく、積分の中で
\int \delta(x-\xi)\varphi(x)\,dx=\varphi(\xi)
と作用する分布(超関数、distribution)である。分布とは、通常の関数値ではなく、滑らかで有界な範囲の外では 0 になる試験関数 \varphi に積分を通して作用する対象である。
3方針
線形性により、一般の入力は点源の連続的な重ね合わせとして扱える。Green 関数が既知なら、解は畳み込みや積分で表現される。
4注意
Green 関数は方程式だけでなく、領域と境界条件に依存する。同じ微分演算子であっても、境界条件が異なれば Green 関数も異なる。また、斉次問題 Lv=0 が零でない解を持つと、L をそのまま逆にできない。
例えば、\Omega を連結で C^1 境界を持つ有界領域とする。\Omega における -\Delta u=f の斉次 Neumann 問題では、定数関数が斉次解になる。発散定理から可解条件
\int_\Omega f\,dx=0
が必要であり、解は定数の差を除いてのみ決まる。この場合は、通常の -\Delta_xG=\delta(x-\xi) では両辺の領域積分が一致しないため、修正版
-\Delta_xG(x,\xi)=\delta(x-\xi)-\frac1{|\Omega|},
\qquad \frac{\partial G}{\partial n}=0,
\qquad \int_\Omega G(x,\xi)\,dx=0
を使う。-1/|\Omega| が右辺の平均を 0 にし、最後の条件が Green 関数に定数を加える自由度を固定する。このように、核がある場合は入力の適合条件と解の正規化を組み込む必要がある。
5一次元 Poisson 問題
区間 0<x<1 で、内部点源の位置を \xi\in(0,1) とし、
-u''(x)=f(x),\qquad u(0)=u(1)=0
を考える。ここでは f を連続関数とする。Green 関数 G(x,\xi) は、x=\xi で傾きが跳び、境界で 0 になる折線として構成される。Green 関数は
G(x,\xi)=
\begin{cases}
x(1-\xi), & 0\le x\le \xi,\\
\xi(1-x), & \xi\le x\le 1
\end{cases}G(x,\xi)=
\begin{cases}
x(1-\xi), & 0\le x\le \xi,\\
\xi(1-x), & \xi\le x\le 1
\end{cases}
である。この式は、x=0,1 で 0 になり、x=\xi で連続であり、傾きの跳びにより -G_{xx}=\delta(x-\xi) を表す。右辺 f を点源の重ね合わせと解釈すると、解は
u(x)=\int_0^1 G(x,\xi)f(\xi)\,d\xi
で表現される。これは各点 \xi の点源への応答を重ね合わせる式である。実際、分布の意味で x について演算子を積分の中へ作用させると
-u''(x)=\int_0^1\delta(x-\xi)f(\xi)\,d\xi=f(x)
となる。また G(0,\xi)=G(1,\xi)=0 なので、積分で得た u も境界条件を満たす。f が連続なら、具体式を区間ごとに直接微分して古典解としても確認できる。この二つの確認により、表現式が元の境界値問題を解くことが分かる。
6Green 関数の式を導出する
x\ne \xi では点源がないため、-G_{xx}=0 である。したがって G は x<\xi と x>\xi の両側で一次関数になる。境界条件 G(0,\xi)=G(1,\xi)=0 を満たすように
G(x,\xi)=
\begin{cases}
Ax, & 0\le x\le \xi,\\
C(1-x), & \xi\le x\le 1
\end{cases}G(x,\xi)=
\begin{cases}
Ax, & 0\le x\le \xi,\\
C(1-x), & \xi\le x\le 1
\end{cases}
と置く。x=\xi で連続であるため
A\xi=C(1-\xi)
が必要である。さらに -G_{xx}=\delta(x-\xi) を \xi-\varepsilon から \xi+\varepsilon まで積分すると
-G_x(\xi+,\xi)+G_x(\xi-,\xi)=1
を得る。ここで G_x(\xi-,\xi)=A、G_x(\xi+,\xi)=-C だから
A+C=1
である。連続条件と跳躍条件を連立して解くと
A=1-\xi,\qquad C=\xi
となる。よって
G(x,\xi)=
\begin{cases}
x(1-\xi), & 0\le x\le \xi,\\
\xi(1-x), & \xi\le x\le 1
\end{cases}G(x,\xi)=
\begin{cases}
x(1-\xi), & 0\le x\le \xi,\\
\xi(1-x), & \xi\le x\le 1
\end{cases}
が導出される。
この具体式は G(x,\xi)=G(\xi,x) を満たす。この対称性は、-d^2/dx^2 と Dirichlet 境界条件の組み合わせが積分に関して対称であることに対応する。実際、同じ零境界条件を満たす v,w に対して部分積分すると
\int_0^1(-v'')w\,dx=\int_0^1v(-w'')\,dx
である。ただし、一般の演算子の Green 関数が常に対称とは限らない。
7具体例: 一定荷重
f(\xi)=1 の場合、解は
u(x)=\int_0^1G(x,\xi)\,d\xi=\frac{x(1-x)}{2}
である。これは -u''=1、u(0)=u(1)=0 を満たす。直接積分でも同じ解を得るが、Green 関数を使用すると任意の右辺 f に対して同一の核を再利用できる。
8図式としての畳み込み
全空間で平行移動対称性がある場合、Green 関数は G(x-\xi) の形になり、解は畳み込み G*f で表現される。境界がある場合は、x と \xi を別々に扱う G(x,\xi) が必要である。この差が fundamental solution と Green 関数の実用上の相違である。
9fundamental solution との相違
基本解 は全空間で L\Phi=\delta を満たす点源応答である。Green 関数は領域と境界条件を反映した点源応答であり、基本解に斉次解を加えて境界条件を合わせて構成できる場合もある。したがって Green 関数の方が境界値問題に適合する。
10関連リンク
data/lecture/math/partial-differential-equations/introduction-to-energy-methods.lecture.n.md
data/lecture/math/differential-equations/step-functions-delta-functions-and-convolution.lecture.n.md
ここまでで二階線形 PDE の性質と解の構成法を確認した。次は一階の transport 方程式へ戻り、局所的な流れから保存則を導く。
data/lecture/math/partial-differential-equations/transport-equations-and-conservation-laws.lecture.n.md