作用素カタログ:基礎編
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2一覧
| 作用素 | 典型形 | 意味 | 対応しやすい変換 |
| 乗法作用素 | (M_mf)(x)=m(x)f(x) | 点ごとに倍率を変える | そのまま扱いやすい。Fourier 変換では畳み込みと関係する |
| 微分作用素 | Df=f',\quad D^2f=f'' | 変化率・曲率を見る | Fourier, Laplace |
| シフト作用素 | (Ex)[n]=x[n+1] | 列を前へ 1 歩ずらす | Z-transform, discrete-time Fourier transform |
| 遅延作用素 | (Rx)[n]=x[n-1], (R_af)(t)=f(t-a) | 入力を遅らせる | Z-transform, Laplace |
| 積分作用素 | (Kf)(x)=\int K(x,y)f(y)\,dy | 平均化・重ね合わせ | Fourier, eigenfunction expansion |
| 畳み込み作用素 | C_hf=h*f | LTI system の応答 | Fourier, Laplace, Z |
| 射影作用素 | P^2=P | 成分を取り出す | 直交分解, Fourier expansion |
3乗法作用素
(M_mf)(x)=m(x)f(x)
は、各点 x で値を m(x) 倍する作用素である。m(x) が 0 になる点では、その点の情報が消える。核を調べるときは、m(x)=0 の集合を見る。
乗法作用素を見るときの発想は、「空間全体を混ぜているのか、それとも点ごとに処理しているのか」である。M_m は点ごとの操作なので、微分や積分より局所的である。
4微分作用素
Df=f'
は変化率を取る作用素である。さらに
D^2f=f''
のような二階微分は、曲がり方や拡散・波動の式に現れる。
微分作用素に Fourier 変換や Laplace 変換が効きやすい理由は、指数関数が微分しても形を変えないからである。たとえば
D(e^{\lambda x})=\lambda e^{\lambda x}
である。したがって、微分作用素は指数関数の基底で見ると、掛け算に変わる。
5シフト作用素と遅延作用素
離散時間で
(Ex)[n]=x[n+1]
は前進シフトである。一方、
(Rx)[n]=x[n-1]
は遅延である。
連続時間で「a だけ遅らせ、t<a では 0 にする」因果的な遅延を表すときは、Heaviside 単位ステップ関数 H を用いて
(R_af)(t)=f(t-a)H(t-a)
と書くことがある。
Z 変換では、両側変換なら
E\mapsto z,\qquad R\mapsto z^{-1}
と対応する。片側 Z 変換では、初期項が追加で現れる。
data/lecture/math/analysis/introduction-to-z-transform.lecture.n.md
6積分作用素
一般の積分作用素は
(Kf)(x)=\int K(x,y)f(y)\,dy
の形で現れる。ここで K(x,y) を核関数という。同じ「核」という日本語でも、\ker L の kernel と K(x,y) の kernel function は文脈が違うので混同しない。
積分作用素は、f(y) の値を K(x,y) で重み付けして集め、x の値を作る。平均化、平滑化、過去の履歴の重ね合わせなどに現れる。
7畳み込み作用素
畳み込みは、関数空間や収束条件を決めないと厳密な意味が定まらない。ここでは安全な設定として、C_c(\mathbb R) を「連続で、ある有限区間の外では 0 になる関数」全体とする。
h\in C_c(\mathbb R) を固定し、
(C_hf)(t)=(h*f)(t)=\int_{-\infty}^{\infty}h(t-\tau)f(\tau)\,d\tau
で
C_h:C_c(\mathbb R)\to C_c(\mathbb R)
を定義する。このような作用素を畳み込み作用素という。
7.1命題:C_h は線型である
7.2証明
f,g\in C_c(\mathbb R) とスカラー \alpha,\beta に対して
\begin{aligned}
C_h(\alpha f+\beta g)(t)
&=\int_{-\infty}^{\infty} h(t-\tau)(\alpha f(\tau)+\beta g(\tau))\,d\tau\\
&=\alpha\int_{-\infty}^{\infty} h(t-\tau)f(\tau)\,d\tau
+\beta\int_{-\infty}^{\infty} h(t-\tau)g(\tau)\,d\tau\\
&=\alpha C_hf(t)+\beta C_hg(t)
\end{aligned}\begin{aligned}
C_h(\alpha f+\beta g)(t)
&=\int_{-\infty}^{\infty} h(t-\tau)(\alpha f(\tau)+\beta g(\tau))\,d\tau\\
&=\alpha\int_{-\infty}^{\infty} h(t-\tau)f(\tau)\,d\tau
+\beta\int_{-\infty}^{\infty} h(t-\tau)g(\tau)\,d\tau\\
&=\alpha C_hf(t)+\beta C_hg(t)
\end{aligned}
である。したがって C_h は線型である。□
畳み込みが重要なのは、線型時不変系の出力が「入力とインパルス応答の畳み込み」として表されるからである。Fourier, Laplace, Z 変換では、畳み込みが積へ変わる。
8射影作用素
P^2=P
を満たす線型作用素 P を射影作用素という。P は「一度取り出した成分を、もう一度取り出しても変わらない」作用素である。
8.1命題:P^2=P なら V=\operatorname{Im}P\oplus\ker P
8.2証明
任意の x\in V に対して
x=Px+(x-Px)
と分解する。Px\in\operatorname{Im}P である。また
P(x-Px)=Px-P^2x=Px-Px=0
なので x-Px\in\ker P である。したがって V=\operatorname{Im}P+\ker P である。
さらに v\in\operatorname{Im}P\cap\ker P とする。v\in\operatorname{Im}P だから v=Pu と書ける。一方、v\in\ker P なので Pv=0 である。しかし
Pv=P(Pu)=P^2u=Pu=v
でもある。したがって v=0 である。よって共通部分は \{0\} であり、
V=\operatorname{Im}P\oplus\ker P
である。□
この命題は、射影を「成分を取り出す操作」として見る理由である。残りの成分は \ker P に入る。
10一言でいうと
作用素の種類を見たら、典型形、意味、対応しやすい変換を確認する。微分は Fourier・Laplace、シフトと遅延は Z、畳み込みは Fourier・Laplace・Z で扱いやすい。