積分公式と計算法
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1導入
この講義では、微分公式から積分公式を導出し、被積分関数の構造に応じて直接公式、置換積分、部分積分を選択する方法を説明する。不定積分は原始関数の集合であり、微分積分学の基本定理によって定積分の計算に接続する。
2線型性と積分定数
F'=f、G'=g ならば (aF+bG)'=af+bg である。したがって、af+bg の原始関数の集合は
\int(af(x)+bg(x))\,dx
=\{aF(x)+bG(x)+C\mid C\in\mathbb{R}\}
である。不定積分の等式は特定の関数ではなく、定数差を許容する原始関数の集合を表す。
3直接公式
積分公式は、右辺を微分して検証する。n を -1 ではない整数とする。n<0 の場合は x\ne0 の区間で、
\int x^n\,dx=\frac{x^{n+1}}{n+1}+C
である。n=-1 では別の公式
\int\frac1x\,dx=\ln|x|+C
を使用する。この公式は 0 を含まない区間ごとに成立し、そのような区間を越えて一つの原始関数を定義するものではない。
基本的な指数関数と三角関数については、
\int e^x\,dx=e^x+C,
\qquad
\int\sin x\,dx=-\cos x+C,
\qquad
\int\cos x\,dx=\sin x+C
である。また、a>0 かつ a\ne1 のとき、
\int a^x\,dx=\frac{a^x}{\ln a}+C
が成立する。公式を適用する際には、微分公式だけでなく関数の定義域も確認する。
4置換積分
置換積分は連鎖律の逆である。F'=f かつ g が微分可能ならば、
\frac{d}{dx}F(g(x))=f(g(x))g'(x)
であるため、
\int f(g(x))g'(x)\,dx=F(g(x))+C
が成立する。被積分関数に合成関数 f(g(x)) と内部関数の導関数 g'(x) が存在することが、選択の基準である。
具体例として、u=x^2 と置けば du=2x\,dx であるから、
\int 2x\cos(x^2)\,dx
=\int\cos u\,du
=\sin(x^2)+C
となる。計算後に微分すれば、係数 2x を含めて元の被積分関数が回復することを確認できる。
定積分では、u=g(x) に対応して端点も変換する。g が [a,b] 上で連続微分可能、すなわち g' が連続であり、f が g([a,b]) を含む区間で連続ならば、
\int_a^b f(g(x))g'(x)\,dx
=\int_{g(a)}^{g(b)}f(u)\,du
が成立する。p<q に対して \int_q^p f(u)\,du=-\int_p^q f(u)\,du と定義するため、g(a)>g(b) の場合にも同じ式を使用できる。
5部分積分
部分積分は積の微分公式の逆である。(uv)'=u'v+uv' を積分して整理すると、
\int u(x)v'(x)\,dx
=u(x)v(x)-\int u'(x)v(x)\,dx
を得る。u' と v' が [a,b] 上で連続ならば、定積分について
\int_a^b u(x)v'(x)\,dx
=\bigl[u(x)v(x)\bigr]_a^b-\int_a^b u'(x)v(x)\,dx
である。
因子の一方を微分すると単純化し、他方の原始関数を容易に求められるとき、部分積分が有効である。たとえば u=x、v'=e^x とすれば、
\int xe^x\,dx
=xe^x-\int e^x\,dx
=xe^x-e^x+C
となる。m が非負整数である x^m e^x のような積では、多項式の次数が 0 になるまで部分積分を反復できる。
6有理関数の分解
有理関数は多項式の商である。分子の次数が分母の次数以上ならば、まず多項式除法を適用する。真分数の分母を因数分解できる場合には、部分分数分解によって直接公式へ還元できる。たとえば、x\ne\pm1 で
\frac1{x^2-1}=\frac12\left(\frac1{x-1}-\frac1{x+1}\right)
であるから、1 と -1 を含まない各区間で
\int\frac1{x^2-1}\,dx
=\frac12\ln|x-1|-\frac12\ln|x+1|+C
が成立する。
7構造による選択
| 被積分関数の構造 | 第一候補 | 判定根拠 |
| 基本関数またはその線型結合 | 直接公式 | 既知の微分公式 |
| f(g(x))g'(x) | 置換積分 | 連鎖律 |
| g'(x)/g(x) | 置換積分 | (\ln|g|)'=g'/g |
| 異種関数の積 | 部分積分 | 一方の微分による単純化 |
| 有理関数 | 除法と部分分数分解 | 代数的分解 |
この表は機械的な優先順位ではない。変形後の積分が単純になるかを確認し、必要なら複数の方法を組み合わせる。
8適用条件と限界
置換積分では、g'(x) に対応する因子とその定数倍を過不足なく処理し、定積分の端点も変換する。部分積分では、境界項 [uv]_a^b を省略してはならない。また、1/x のように特異点を有する関数では、通常の定積分の区間が特異点を含まないことを確認する。端点または内部に特異点がある積分は、本講義で扱う通常の定積分の適用範囲外である。
本講義で導出した公式だけでは、すべての連続関数の原始関数を直ちに既知の式へ還元できない。たとえば e^{-x^2} に三つの方法を直接適用しても、ここまでの基本公式には還元されない。定積分の値が必要な場合には、数値積分による近似も選択肢となる。
9演習
data/exercise/math/calculus/integration-methods-and-computation.exercise.n.md
data/exercise/math/calculus/substitution-and-integration-by-parts.exercise.n.md
10関連資料
data/lecture/math/calculus/integration-basics.lecture.n.md
data/lecture/math/calculus/differentiation-rules-and-computation.lecture.n.md
data/lecture/math/calculus/antiderivatives-and-indefinite-integrals.lecture.n.md
data/lecture/math/calculus/fundamental-theorem-of-calculus.lecture.n.md
data/lecture/math/calculus/calculus-applications.lecture.n.md