2用語と定義
積分方程式 とは、未知関数が積分の中に現れる方程式である。a<b、\lambda\in\mathbb R とし、g と K は既知、y は実数値の未知関数とする。
核とは、積分項に現れる既知関数 K(x,t) であり、点 t の値へ重みを付けて点 x へ集める役割を持つ。
積分区間が固定された
g(x)=\int_a^bK(x,t)y(t)\,dt,
\qquad
y(x)=g(x)+\lambda\int_a^bK(x,t)y(t)\,dt
をそれぞれ Fredholm 第 1 種、Fredholm 第 2 種という。第 1 種は未知関数が積分項にだけ現れる逆問題であり、第 2 種は y 自身も式に現れる。
上端が x まで動く
y(x)=g(x)+\lambda\int_a^xK(x,t)y(t)\,dt
を Volterra 第 2 種という。「それまでの履歴を足す」という解釈は Volterra 型に対応する。y が積分の中で線型に現れれば線形積分方程式、F(t,y(t)) のように非線形に現れれば非線形積分方程式である。
5厳密な説明
5.11. 微分方程式から積分方程式へ
I を a を含む区間とし、F:I\times\mathbb R\to\mathbb R は連続とする。初期値問題
y'(x)=F(x,y(x)),\qquad y(a)=y_0
を考える。これを a から x まで積分すると
\int_a^x y'(s)\,ds=\int_a^x F(s,y(s))\,ds
である。微積分学の基本定理より
y(x)-y(a)=\int_a^x F(s,y(s))\,ds
だから
y(x)=y_0+\int_a^x F(s,y(s))\,ds
を得る。これは一般には非線形な Volterra 第 2 種である。
逆に、y\in C(I) がこの積分式を満たすなら、F(s,y(s)) は連続である。微分積分学の基本定理により右辺は C^1 となり、微分すれば y'=F(x,y)、x=a を代入すれば y(a)=y_0 を得る。したがって
\begin{aligned}
&y\in C^1(I),\quad y'=F(x,y),\quad y(a)=y_0\\
&\qquad\Longleftrightarrow\qquad
y\in C(I),\quad y(x)=y_0+\int_a^xF(s,y(s))\,ds
\end{aligned}\begin{aligned}
&y\in C^1(I),\quad y'=F(x,y),\quad y(a)=y_0\\
&\qquad\Longleftrightarrow\qquad
y\in C(I),\quad y(x)=y_0+\int_a^xF(s,y(s))\,ds
\end{aligned}
である。この同値変形と、解が存在すること・一意であることは別問題である。たとえば F が未知変数について局所的に Lipschitz 連続なら、十分短い区間で Picard 反復を縮小写像として扱い、局所解の存在と一意性を得られる。連続性だけでは一意性は保証されない。
5.22. 線形の積分方程式
X=C([a,b]) を連続関数の空間とし、
\|y\|_\infty:=\max_{a\le x\le b}|y(x)|
と置く。g\in X、K\in C([a,b]^2) とし、
\|K\|_\infty:=\max_{(x,t)\in[a,b]^2}|K(x,t)|
と定義する。また
T:X\to X,
\qquad
(Ty)(x):=\int_a^bK(x,t)y(t)\,dt
と定義する。T は積分作用素であり、線型性は積分の線型性から従う。また
|(Ty)(x)|
\le\int_a^b|K(x,t)|\,|y(t)|\,dt
\le(b-a)\|K\|_\infty\|y\|_\infty
なので、作用素ノルム
\|T\|:=\sup_{\|y\|_\infty\le1}\|Ty\|_\infty
は
\|T\|\le(b-a)\|K\|_\infty
である。I:X\to X を Iy=y で定義される恒等作用素とすると、Fredholm 第 2 種は
(I-\lambda T)y=g
という線型作用素方程式である。
5.33. 小さい作用素なら一意に解ける
q:=|\lambda|\,\|T\|<1 とする。\Phi(y)=g+\lambda Ty と置けば
\|\Phi(y)-\Phi(z)\|_\infty
\le q\|y-z\|_\infty
なので \Phi は縮小写像である。y_0=g、y_{n+1}=\Phi(y_n) と反復すると
\|y_{n+1}-y_n\|_\infty
\le q^n\|y_1-y_0\|_\infty
である。m>n なら三角不等式と等比級数より
\|y_m-y_n\|_\infty
\le\frac{q^n}{1-q}\|y_1-y_0\|_\infty\to0
なので y_n は一様Cauchy列になる。C([a,b]) では一様Cauchy列の極限も連続なので、極限 y\in X を持つ。極限を反復式へ入れれば y=\Phi(y) である。2 つの解 y,z があれば
\|y-z\|_\infty\le q\|y-z\|_\infty
より y=z なので一意である。
反復を展開すると Neumann 級数
y=\sum_{n=0}^{\infty}(\lambda T)^ng
を得る。|\lambda|\|T\|<1 は存在と一意性の十分条件であり、必要条件ではない。
5.44. Volterra 方程式を反復で解く
y'(x)=y(x),\qquad y(0)=1
なら
y(x)=1+\int_0^x y(s)\,ds
と書ける。y_0(x)=1 から
y_{n+1}(x)=1+\int_0^xy_n(s)\,ds
と反復すると
y_n(x)=1+x+\frac{x^2}{2!}+\cdots+\frac{x^n}{n!}
を帰納的に得る。この列は有界区間で一様に
y(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{x^k}{k!}=e^x
へ収束する。したがって積分形は単なる書換えではなく、逐次近似による解法にもなる。
5.55. 小ささの条件を外すと何が起こるか
[a,b]=[0,1]、K(x,t)=1 とすると
(Ty)(x)=\int_0^1y(t)\,dt
は定数関数を返す。y\equiv1 は Ty=y を満たすので、1 は T の固有値である。\lambda=1,g=0 なら (I-T)y=0 は任意の定数関数を解に持ち、一意でない。
一方、\lambda=1,g\equiv1 で y=1+Ty とすると、両辺を 0 から 1 まで積分して c=\int_0^1y(t)dt と置けば c=1+c となり矛盾するので、解はない。
一般に \lambda\ne0 のとき、斉次方程式 (I-\lambda T)y=0 が非零解を持つことは
Ty=\frac1\lambda y
と同値である。つまり \lambda ではなく 1/\lambda が T の固有値となる場合に一意性が失われる。
8最終形
\boxed{y'=F(x,y),\ y(a)=y_0
\Longleftrightarrow
y(x)=y_0+\int_a^xF(s,y(s))\,ds}
\boxed{(I-\lambda T)y=g,
\qquad
(Ty)(x)=\int_a^bK(x,t)y(t)\,dt}
この同値は F の連続性と、左辺では y\in C^1、右辺では y\in C という条件の下で用いる。また g\in C([a,b])、K\in C([a,b]^2) かつ |\lambda|\|T\|<1 なら第 2 種 Fredholm 方程式は一意解 y=\sum_{n\ge0}(\lambda T)^ng を持つ。