厳密な説明
微分を選択する局面
f'(x) は差商の極限であり、x の微小変化に対する f(x) の変化率を表す。したがって、接線、法線、増減、極値、近似では微分が主役になる。
f'(x)>0 の区間では f は増加し、f'(x)<0 の区間では f は減少する。極値の候補は、f'(x)=0 となる点、または微分不能な点である。ただし、f'(a)=0 は極値の必要条件ではあっても十分条件ではない。符号変化、二階微分、あるいは問題固有の構造を追加で確認する。
一次近似
f(x)\approx f(a)+f'(a)(x-a)
は、微分を使用する理由をよく表している。関数を一点近傍で線形化できるから、複雑な曲線でも接線で近似できる。
積分を選択する局面
積分は区間ごとの寄与を合算する操作である。連続関数 f(x)\ge0 に対して、
\int_a^b f(x)\,dx
は曲線と x 軸で囲まれる面積を与える。しかし積分の役割は面積に限らない。速度を積分すれば変位、密度を積分すれば質量、流量を積分すれば総量となる。
平均値も積分の応用である。区間 [a,b] における平均値 m は、総量が一致する定数関数として
m(b-a)=\int_a^b f(x)\,dx
を満たす。したがって
m=\frac{1}{b-a}\int_a^b f(x)\,dx
である。平均値は代表値ではなく、「同じ総量を与える一定値」として定義される。
微分と積分を往復する局面
速度 v(t) が与えられたとき、変位は
\int_a^b v(t)\,dt
で与えられる。さらに v(t)=s'(t) なら、微分積分学の基本定理により
\int_a^b v(t)\,dt=s(b)-s(a)
となる。ここでは導関数という局所量を積分して全体変化へ戻している。
最適化でも往復が現れる。面積や体積を表す関数を構成した後、その極値を微分で判定する。したがって、積分が問題設定を担い、微分が最適条件を担う場合もある。
具体例
極値の判定例
f(x)=x^3-3x とする。このとき
f'(x)=3x^2-3=3(x-1)(x+1)
である。したがって極値の候補は x=-1,1 である。符号を確認すると、x<-1 で f'(x)>0、-1<x<1 で f'(x)<0、x>1 で f'(x)>0 である。よって x=-1 で極大、x=1 で極小となる。
この例が代表するのは、「局所量の符号から全体の増減を判定する」という微分の標準的役割である。
変位と移動距離の対照例
速度 v(t)=t-1 を 0\le t\le2 で考える。変位は
\int_0^2 (t-1)\,dt
=\left[\frac{t^2}{2}-t\right]_0^2
=0
である。しかし移動距離は
\int_0^2 |t-1|\,dt
=\int_0^1 (1-t)\,dt+\int_1^2 (t-1)\,dt
=\frac12+\frac12
=1
である。速度を積分した結果は変位であって、移動距離ではない。この差異は、定積分が符号つき累積量であることに由来する。
平均値の例
f(x)=x^2 の区間 [0,3] における平均値を求めると、
\frac{1}{3-0}\int_0^3 x^2\,dx
=\frac13\left[\frac{x^3}{3}\right]_0^3
=\frac13\cdot9
=3
となる。ここで平均値 3 は、各点の平均というより、同じ総面積を与える一定高さである。
典型の誤用
第一に、f'(a)=0 だけで極値と断定してはならない。f(x)=x^3 は f'(0)=0 だが、x=0 で極値を持たない。
第二に、速度の積分を移動距離と同一視してはならない。負の速度が存在する場合、変位と移動距離は一致しない。
第三に、面積を積分で求める際、上側の関数と下側の関数の順序を確認しなければならない。\int_a^b (f-g)\,dx は常に面積とは限らず、符号つき差になる。
どこまで成立するか
微分による極値判定は、微分可能性や符号変化の確認を必要とする。二階微分判定も有効だが、二階導関数が 0 になる場合は結論を保留する必要がある。
積分を面積として解釈するには、関数の符号と区間の分割に注意する必要がある。負の値を含む場合、定積分は幾何的面積ではなく符号つき累積量である。
実際の応用問題では、微分だけ、積分だけで完結しない場合がある。その場合は、問題設定に積分、最適条件に微分というように、役割を分離して処理する。