markdown
物理ポータルmd 61db5bc
lecture/physics/physics-portal.lecture.n.md
Download PDF
物理ポータル
1導入
この講義では、物理を公式の列挙としてではなく、量を定義し、対象をモデルに落とし、変化または保存を式にする体系として解説する。
物理の問題では、いきなり有名な公式を探すと破綻しやすい。先に確認すべきものは、次の 4 つである。
- どの物体・系を対象にするか。
- どの量を未知数にするか。
- どの理想化を採用しているか。
- 運動方程式で局所的に追跡するか、保存則で前後を比較するか。
この順序を固定すると、力学、熱力学、波動、電磁気、光学、現代物理は、別々の暗記単元ではなく、同じ読解手順で扱える。
2用語と定義
物理量とは、数値と単位をもつ量である。たとえば位置は x\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}]、速度は v\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}]、力は F\ [\mathrm{N};\ \mathsf{MLT^{-2}}] と書く。
モデルとは、現象から重要な要素だけを残して計算できる形にしたものである。質点、剛体、理想気体、正弦波、点電荷などが典型である。
法則とは、一定の仮定のもとで量どうしを結ぶ関係である。法則を使うときは、式だけでなく適用条件を確認する。
3方針
物理の各章は、次の見方で読む。
| 見方 | 中心になる量 | 代表分野 |
| 局所的な変化 | 力、加速度、時間変化 | 力学、電磁気 |
| 保存と収支 | エネルギー、運動量、電荷 | 力学、熱力学、回路 |
| 場の見方 | 電場、磁場、波動場 | 電磁気、波動 |
| 統計的・量子的な見方 | 温度、確率、エネルギー準位 | 熱力学、現代物理 |
この講義では、章の境界ではなく方針の選択を示す。同じ現象でも、途中の力が必要なら運動方程式、始点と終点だけでよいなら保存則を選ぶ。
4直感的な説明
物理の式は、現象をそのまま写した写真ではない。何を無視し、何を残すかを決めた後に成立する模型である。
たとえば落下で a=g と置けるのは、空気抵抗を無視し、地表付近で重力加速度が一定と見なせるからである。条件が変われば、式も変わる。
したがって、物理で重要なのは「この公式を知っているか」ではなく、「いまの状況がその公式の仮定に入っているか」を判断することである。
5厳密な説明
物理の立式は、次の順序で実行する。
5.11. 対象を決定する
対象を 1 物体にするか、複数物体をまとめた系にするかを決定する。対象を変えると、外力と内力の区別が変わる。
5.22. 量を定義する
位置、速度、圧力、電位など、使う量を単位つきで置く。式の途中で単位が合わないなら、その式は物理量として足せない量を混ぜている。
5.44. 適用条件を確認する
保存則は常に使える魔法ではない。力学的エネルギー保存は、非保存力の仕事が 0 のときに限る。理想気体の式は、分子間力や分子の体積を無視できる範囲で使う。
7見分け方
| 問題文の手がかり | 最初に見るもの |
| 力、加速度、張力 | 自由体図と運動方程式 |
| 高さ、速さ、ばね、摩擦 | 仕事とエネルギー収支 |
| 衝突、合体、分裂 | 運動量と力積 |
| 温度、熱、状態変化 | 熱力学第一法則 |
| 波長、振動数、干渉 | 位相と重ね合わせ |
| 電場、電位、電流 | 場または回路の法則 |
8どこまで成立するか
このポータルは、高校物理を中心に、大学初年級の見方を補助線として接続する。量子力学、統計力学、連続体力学の一般論までは含めない。ただし、各講義では条件が外れると何が壊れるかを明示する。
9最終形
\boxed{\text{対象を決める}\rightarrow\text{量を定義する}\rightarrow\text{法則を選ぶ}\rightarrow\text{条件を確認する}}
\boxed{\text{局所的に追うなら運動方程式、前後を比べるなら保存則}}
10一言でいうと
物理は公式の暗記ではなく、対象・量・モデル・法則を順に確定する読解である。