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緩衝液の基本
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導入
この講義で最重要なのは、緩衝液は「弱酸とその共役塩基が同時にある平衡」として見ることです。
緩衝液を暗記で覚えると、「なぜ少量の酸や塩基を加えても pH があまり変わらないのか」が見えません。ここでは、平衡が移動して変化を打ち消す仕組みを先に押さえます。
用語と定義
緩衝液 とは、少量の酸や塩基を加えても pH が大きく変化しにくい溶液です。
共役酸塩基対 とは、水素イオン \mathrm{H^+} を 1 つ失うか受け取るかの関係にある酸と塩基の組です。
方針
まず弱酸 \mathrm{HA} とその共役塩基 \mathrm{A^-} の平衡
\mathrm{HA \rightleftharpoons H^+ + A^-}
を中心に見ます。そのあと、酸や塩基を加えたときに、この平衡がどちらへ動くかを読みます。
直感的な説明
緩衝液では、酸を少し入れると共役塩基がそれを受け取り、塩基を少し入れると弱酸がそれを受け止めます。つまり、「余分に入ったものを受け止める相手」が両方いるので、pH が急には動きません。
厳密な説明
1. 弱酸の平衡
化学平衡そのものの意味がまだ曖昧なら、ここで先に戻っておくと読みやすくなります。
data/lecture/chemistry/theoretical/化学平衡の基本-講義.n.md
\mathrm{HA \rightleftharpoons H^+ + A^-}
より、
K_{\mathrm a}=\frac{[\mathrm{H^+}][\mathrm{A^-}]}{[\mathrm{HA}]}
です。したがって
[\mathrm{H^+}]=K_{\mathrm a}\frac{[\mathrm{HA}]}{[\mathrm{A^-}]}
となります。
2. pH の見方
両辺の対数を取ると、
\mathrm{pH}=\mathrm{p}K_{\mathrm a}+\log_{10}\frac{[\mathrm{A^-}]}{[\mathrm{HA}]}
です。
これは、まず
[\mathrm{H^+}]=K_{\mathrm a}\frac{[\mathrm{HA}]}{[\mathrm{A^-}]}
の両辺に -\log_{10} を作用させて
-\log_{10}[\mathrm{H^+}]=-\log_{10}K_{\mathrm a}-\log_{10}\frac{[\mathrm{HA}]}{[\mathrm{A^-}]}
とし、さらに
\log_{10}\frac{[\mathrm{HA}]}{[\mathrm{A^-}]}=-\log_{10}\frac{[\mathrm{A^-}]}{[\mathrm{HA}]}
を使えば得られる式です。
この式は、「pH は \mathrm{A^-} と \mathrm{HA} の比で決まる」と読むのが大切です。
3. 酸や塩基を加えたとき
酸を加えると \mathrm{H^+} が増えますが、平衡は左へ寄って \mathrm{A^-} が \mathrm{H^+} を受け取ります。つまり外から入った \mathrm{H^+} を、共役塩基が消費してしまいます。
塩基を加えると \mathrm{OH^-} が \mathrm{H^+} を減らしますが、そのぶん平衡は右へ進んで \mathrm{HA} が電離します。つまり外から入った \mathrm{OH^-} を、弱酸が結果的に受け止めます。
見分け方
- 弱酸とその塩が同時にあるときは、まず緩衝液を疑います。
- 少量の酸や塩基を加えても pH が大きく変わらない、という記述があれば緩衝作用です。
- 濃度の絶対値だけでなく、\frac{[\mathrm{A^-}]}{[\mathrm{HA}]} の比に注目します。
最終形
\boxed{\mathrm{HA \rightleftharpoons H^+ + A^-}}
\boxed{K_{\mathrm a}=\frac{[\mathrm{H^+}][\mathrm{A^-}]}{[\mathrm{HA}]}}
\boxed{\mathrm{pH}=\mathrm{p}K_{\mathrm a}+\log_{10}\frac{[\mathrm{A^-}]}{[\mathrm{HA}]}}
一言でいうと
- 緩衝液は、弱酸と共役塩基の平衡が、外からの変化を受け止める仕組みです。