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逆行列の基本
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導入
この講義で最重要なのは、逆行列は公式として覚えるものではなく、「写像を元に戻せるか」という視点で理解するものだということです。
行列 A が入力を出力へ送るなら、逆行列 A^{-1} はその出力を元の入力へ戻す役割をもちます。元に戻せないなら、逆行列は存在しません。
用語と定義
逆行列 とは、AA^{-1}=A^{-1}A=I を満たす行列です。
単位行列 とは、掛けても何も変えない行列 I です。
方針
まず逆行列を「元に戻す写像」として見ます。そのあと、掃き出し法で A を I に変形する過程が、そのまま A^{-1} を作る過程になることを見ます。
直感的な説明
拡大だけなら、あとで縮小すれば元に戻せます。回転だけなら、逆向きに回転すれば戻せます。しかし、平面を 1 本の直線へつぶしてしまう写像は、情報が失われるので元に戻せません。これが逆行列がない場合です。
厳密な説明
1. 定義
A^{-1} が存在するとき
AA^{-1}=I,\qquad A^{-1}A=I
です。
2. 掃き出しで求める
\left(A \mid I\right)
を作って、左側を I へ掃き出します。すると右側が A^{-1} になります。
3. 存在しない場合
掃き出しの途中で主役になる成分が立たず、階数が足りないときは、逆行列は存在しません。
見分け方
- 写像を元に戻したい、または Ax=b を一括で解きたいなら、逆行列を疑います。
- 掃き出して左側を I にできるかが、存在判定の鍵です。
- 行列式が 0 でないことも判定に使えますが、本質は元に戻せるかです。
最終形
\boxed{AA^{-1}=A^{-1}A=I}
\boxed{(A\mid I)\rightarrow (I\mid A^{-1})}
一言でいうと
- 逆行列は、行列が表す変換を元に戻せるときにだけ存在します。