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標本化と標本化定理の基本
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標本化と標本化定理の基本
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導入
この講義で最重要なのは、連続時間の信号を離散化しても情報を失わずにすむ条件があることです。
音や電圧は時間の連続関数ですが、計算機は離散的な列として扱います。この橋渡しをするのが標本化です。ここで雑に点を取ると情報が壊れますが、帯域が限られていれば、きちんと復元できます。
用語と定義
標本化 とは、連続時間の信号を一定間隔で読み取って列にする操作です。
標本化周波数 は 1 秒あたり何回標本を取るかで、f_s と書きます。
ナイキスト周波数は f_s/2 です。
直感的な説明
波形を一定間隔で写真のように撮ると考えると、間隔が荒すぎると速い振動は見えなくなります。ゆっくりした波に見えたり、別の周波数へ化けて見えたりします。これが折り返しです。
厳密な説明
1. 標本化
連続信号 x(t) を標本化間隔 T_s で読み取ると
x[n]=x(nT_s)
という離散信号を得ます。ここで
f_s=\frac{1}{T_s}
です。
この式が自然なのは、標本を 1 回取るたびに T_s だけ時間が進むからです。つまり T_s は 1 回あたりの時間間隔で、f_s はその逆数としての「1 秒あたりの回数」になっています。
2. 周波数領域で何が起こるか
時間領域での標本化は、周波数領域では元のスペクトルが f_s ごとに繰り返されることに対応します。
時間領域で標本化するとは、連続信号を等間隔の点列で抜き出すことです。周波数領域では、この等間隔の点列が周期的な構造を持つため、元のスペクトルが整数倍の f_s だけずれた位置に複写されます。ここが「標本化すると周波数領域で繰り返しが起こる」という核心です。
したがって元の信号の最高周波数を B とすると、
f_s>2B
なら複写されたスペクトルどうしが重ならず、元の信号を復元できます。
3. 標本化定理
帯域制限された信号の最高周波数が B なら、
\boxed{f_s>2B}
で完全に復元できます。これが標本化定理です。
なぜ 2B が境界になるかというと、元のスペクトルが -B から B まで広がっているなら、右へ f_s だけずらした複写の左端は f_s-B に来ます。これが元の右端 B より右にあれば重なりません。したがって
f_s-B>B
すなわち
f_s>2B
が必要であり、十分でもあります。
4. 折り返しひずみ
もし f_s<2B なら、高い周波数成分が低い周波数成分として見えてしまいます。これがエイリアシングです。
たとえば f_0 の正弦波を標本化したとき、f_0 と f_s-f_0 は標本点の上で同じ列を作ることがあります。これが「別の周波数なのに同じデータへ見える」理由です。
別の見方
時間領域の見方
一定間隔で点を取る操作として標本化を見る見方です。
周波数領域の見方
スペクトルが繰り返し現れ、その重なりが折り返しを生むと見る見方です。こちらの見方のほうが、標本化定理の本質は見えやすくなります。
見分け方
- 連続信号を計算機へ入れる話なら、まず標本化を疑います。
- 高周波が低周波へ化けるような現象が出たら、折り返しひずみを考えます。
どこまで成り立つか
ここでの標本化定理は、信号が理想的に帯域制限されていることを前提にしています。実際には完全な帯域制限は難しいので、前段にアンチエイリアスフィルタを入れるのが普通です。
最終形
\boxed{x[n]=x(nT_s)}
\boxed{f_s=\frac{1}{T_s}}
\boxed{f_s>2B}