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可算名詞と不可算名詞、冠詞の基本-講義
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可算名詞と不可算名詞、冠詞の基本-講義
導入
この講義の核心は、冠詞を「なんとなく a を付ける」「なんとなく the を付ける」という感覚の問題として扱わないことである。冠詞の誤りは、たいてい冠詞そのものより前段階の名詞句設計が曖昧なところから生じる。つまり、まずその名詞が数えられるのか、つぎに聞き手にとってどの対象か特定できるのか、さらにその対象が文脈で既知なのかを順番に判定しなければならない。
bring thick coat のような誤りは、「厚手のコート」という名詞句を英語でどう立てるかが決まっていないために起こる。ここで必要なのは冠詞の暗記ではなく、名詞句ごとに a / the / Ø を選ぶ判断表である。
中心課題
なぜ bring a thick coat は自然で、bring thick coat は不自然なのか。なぜ the report と言う場面と a report と言う場面が分かれるのか。さらに、なぜ information や advice のような語には普通 a を付けないのか。
用語
- 可算名詞: 一個・二個のように数えられる名詞
- 不可算名詞: 量や概念として捉え、普通は個数で数えない名詞
- 特定性: 話し手がどの対象を指しているかが絞れている度合い
- 既知性: 聞き手にとってその対象が文脈上共有されている度合い
方針
冠詞で迷ったときは、次の順序で判定する。
- その名詞は可算か不可算か
- 可算名詞なら、ここで単数として立てたいのか、複数として立てたいのか
- 聞き手がどの対象か特定できるか
- 特定できるなら the、単数可算でまだ特定されていないなら a / an、複数または不可算で一般に述べるなら Ø を候補にする
直感的な説明
冠詞は、名詞の前に小さく置かれるが、役割は大きい。a は「同種のものが複数あり、そのうちの 1 個」という見方をつくる。the は「話し手と聞き手のあいだで、どれを指すかが決まる」という見方をつくる。Ø は「一般論として種類や量を述べる」か、「その名詞がそもそも個に切り分かれにくい」という見方をつくる。
日本語では「コートを持っていく」「報告書を読む」「情報が必要だ」と言えば、名詞句の立て方はほとんど表面に出ない。ところが英語では、その名詞句を個として出すのか、共有済みのものとして出すのか、一般的な概念として出すのかを毎回決める必要がある。
厳密な説明
1. まず可算性を判定する
冠詞の判断は、まず名詞が数えられるかどうかから始まる。単数可算名詞は、原則として裸では置けない。したがって、coat を単数で使うなら、a coat か the coat のように冠詞が必要になる。
一方、information、advice、equipment のような不可算名詞は、普通は量として扱うので an information や an advice にはしない。必要なら a piece of information のように単位を補って数える。
2. つぎに特定性を判定する
可算性が決まっても、それだけでは a と the は決まらない。ここで必要なのが特定性である。話し手が「どの報告書か」を具体的に指しているなら the report になるし、まだ一冊の候補として導入しているだけなら a report になる。
a. I need a report by tomorrow.
b. I revised the report you sent yesterday.
a では、まだどの報告書かが共有されていないので a report になる。b では、you sent yesterday が付いてどの報告書かが絞れるため the report が自然である。
3. 既知性は談話の流れで決まる
同じ名詞でも、文脈の流れが変われば冠詞も変わる。はじめて出すときは a proposal でも、そのあとでその提案を受けて述べるなら the proposal になる。ここで大事なのは、「同じ名詞だから同じ冠詞」ではなく、「話し手と聞き手の共有状態が変わったから冠詞も変わる」と見ることである。
4. Ø は「冠詞がない」のではなく、「その見方で出している」
Ø は空欄ではない。複数名詞で一般論を述べるときの Books are expensive.、不可算名詞を一般的に述べる Information is important. のように、Ø は一般・種類・量を表す一種の選択である。
判断表
| 名詞句の状態 | 候補 |
| 単数可算で、まだ特定されていない | a / an |
| 単数可算で、どの対象か特定できる | the |
| 複数で、一般論として述べる | Ø |
| 複数で、どの対象か特定できる | the |
| 不可算で、量や概念を一般的に述べる | Ø |
| 不可算で、特定の内容を指す | the |
最小の具体例
例 1: 厚手のコート
○
Bring a thick coat.
[ART] coat は単数可算名詞なので、裸のままでは置けない。
×
Bring thick coat.
[ART] 単数可算名詞に冠詞がない。
例 2: 共有済みの報告書
○
Please revise the report before the meeting.
×
Please revise a report before the meeting.
ここでは会議前に直すべき報告書が共有されているため、the report が自然である。a report にすると、「どれでもよい 1 本」のような響きになる。
例 3: 情報
○
We need more information.
×
We need an information.
information は不可算名詞なので、普通は an information にしない。一件の情報として数えたいなら a piece of information のように単位を補う。
別の見方
冠詞は名詞の前に付く小さな語であるが、実際には名詞句の「導入ラベル」に近い。a report は「ここで新しく 1 件の報告書を導入する」という表示であり、the report は「すでに共有されている報告書へ戻る」という表示である。Ø は「種類や量として扱う」という表示である。
この見方を採ると、冠詞は単独の飾りではなく、文脈管理の道具だと分かる。したがって、ART の誤りを減らすには、単語帳のように a と the を別々に覚えるより、名詞句が文脈の中でどの役割を果たすかを見るほうが有効である。
見分け方
- 冠詞だけを見て迷わず、まずその名詞が可算か不可算かを決める
- 単数可算なのに冠詞がないなら、ART の可能性が高い
- the を使うときは、「聞き手はどれを指すか分かるか」と自問する
- Ø を選ぶときは、「一般論なのか、不可算なのか、慣用表現なのか」を区別する
どこまで成り立つか
この判断表は Ch5 の基本であり、大半の ART を処理できる。しかし、go to school、at home、総称の The tiger is an endangered species. のような例は、単純な判断表だけでは十分に説明しきれない。そうした規則外・慣用的な用法は Ch11 で扱う。
最終形
冠詞の判断順序
- 可算か不可算か
- 単数か複数か
- 特定できるか
- 既知として共有されているか
→ その結果として a / the / Ø を選ぶ
一言でいうと
冠詞は名詞の飾りではなく、名詞句をどう立てるかという設計の結果である。