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関係詞と節の基本-講義
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関係詞と節の基本-講義
導入
日本語では「昨日 会った人」「私が前に読んだ本」のように、名詞の前に長い説明を置いてもそれほど不自然ではない。ところが英語は、名詞の前に長い情報を積みにくい。そこで英語では、まず名詞を出し、そのあとに節を後置して「どの人か」「どの本か」を識別する。
この講義の中心は、関係詞を単なる表現の暗記ではなく、名詞に後ろから節をつなぐ設計として理解することである。Ch1 で主節の S-V を立てたあと、Ch2 ではその主節を壊さずに従属節をつなぐ基本を学ぶ。
中心的な問い
関係詞は、どのようにすれば主節を崩さずに名詞へ情報を追加する装置として使えるか。
用語
- 関係詞: 名詞を受け、その名詞に関する節を後ろからつなぐ語
- 関係節: 関係詞を含み、先行詞を説明する節
- 先行詞: 関係節が説明する名詞
- 限定用法: 「どの X か」を絞り込む用法
- 補足用法: すでに特定された名詞に追加情報を添える用法
方針
関係詞を扱うときは、次の順序で考える。
- まず主節の S-V を固定する。
- 説明したい名詞を先行詞として決める。
- その名詞を説明する節の内部で、どの要素が欠けているかを見る。
- 欠けている役割に応じて who / which / that / where / when などを選ぶ。
直感的な説明
関係詞は、名詞の後ろに小さな説明部屋をつくる道具である。たとえば「私が昨日 会った人」を英語で言いたいなら、まず the person を置き、その後ろに I met yesterday という説明部屋を付ける。この説明部屋には本来 目的語が必要だが、そこが空席になっているので、そこを先行詞とつなぐ目印として who や that が入る。
ここで大切なのは、関係詞の後の節を単独で完成させようとしないことである。その節は先行詞の一部を借りて成立している。だから関係詞の問題は、語彙よりも「節の中で何が空いているか」を見抜けるかどうかにかかっている。
厳密な説明
関係節は、名詞句の内部に後置される修飾節である。したがって、文全体の骨格を見るときは、関係節をいったん括弧に入れて主節から外してよい。
骨格の見え方
The report [that we discussed yesterday] needs revision.
主節: The report needs revision.
関係節: that we discussed yesterday
関係節の内部では、先行詞に対応する位置が空所になっている。
- the person who I met yesterday では、met の目的語が空いている
- the student who came late では、came の主語が空いている
- the town where I was born では、場所を表す成分が空いている
この見方に立つと、関係詞の選択は「何を受けるか」だけでなく、「関係節の中でどの役割が欠けているか」で決まる。
関係詞の省略
限定用法で空所が目的語の位置にある場合、who / which / that を省略できる。
a. This is the proposal (that) we discussed last month.
b. Please revise the report (that) you sent yesterday.
ただし空所が主語の位置にある場合は省略できない。
a. Students who submitted the form will be contacted. (who は省略不可)
b. The student who came late apologized. (who は省略不可)
目的語型の省略を接触節と呼ぶことがある。書き言葉では that を明示するほうが安全であり、省略した場合に主語か目的語かが判別しにくくなる場合は関係詞を残す。
具体例
例 1: 目的語が空いている関係節
日本語: 私が昨日 会った人は研究者だった。
○
The person who I met yesterday was a researcher.
解説
主節は The person was a researcher. である。ここに「私が昨日 会った」という情報を付けたいので、the person を先行詞にする。関係節の中を考えると I met yesterday となり、met の目的語が空いている。だから who を置いて先行詞とつなぐ。
×
The person I met him yesterday was a researcher.
[CLS] 関係節の中で先行詞に対応する空所があるのに、さらに him を足してしまっている。
例 2: 主語が空いている関係節
日本語: 遅れて来た学生は謝罪した。
○
The student who came late apologized.
解説
主節は The student apologized. である。「遅れて来た」が学生を限定しているので、the student の後ろに関係節を置く。関係節の内部では came late の主語が空いているので who が使われる。
×
The student who he came late apologized.
[CLS] 関係節の主語がすでに先行詞で埋まるので、he を重ねるのは過剰である。
例 3: 場所を表す関係
日本語: これは私が生まれた町である。
○
This is the town where I was born.
解説
the town が先行詞であり、その町について「私が生まれた」という情報を足している。ここでは関係節の中で場所の成分が必要なので where が自然である。
×
This is the town where I was born there.
[CLS] where がすでに場所の役割を担っているので、there を重ねると重複になる。
例 4: 限定と補足の差
a. Students who submit the form early will receive feedback first.
b. My brother, who lives in Osaka, works in publishing.
解説
a では who submit the form early が「どの学生か」を絞っているので限定用法である。b では my brother はすでに誰か特定されているので、who lives in Osaka は追加情報にすぎない。英語では読点の有無がこの差を可視化する。
別の見方
関係詞は翻訳の技術でもあるが、より本質的には情報配置の技術である。日本語は名詞の前に長い説明を置けるが、英語は名詞を先に出してから後ろで絞る。この違いを意識すると、「日本語を前から順に英訳しようとして複文が壊れる」問題が減る。
見分け方
- 主節の S-V が二つ並んで見えるのに接続の仕組みがないなら、CLS を疑う。
- 名詞の前に長い説明を置こうとして英語が不自然なら、関係節への変換を考える。
- who / which / where を使った後に him / it / there などを重ねているなら、空所の把握に失敗している可能性が高い。
- 関係節の内部だけを独立した文として見たときに、主語か目的語か場所などのどれが欠けているかを判定する。
どこまで成り立つか
この講義では Ch2 の入口として、限定用法を中心に who / which / that / where の基本に絞っている。whose, whom, 前置詞 + which, 補足用法の細かい句読法、関係詞を省略できる条件などは、この基本が安定してから段階的に広げればよい。
また、関係詞だけでなく to 不定詞や分詞でも名詞の後置修飾はできる。しかし CLS の基礎としては、まず節を使って明示的に接続する型を安定させるのが先である。
そのうえで、接続できるようになったあとに必要になるのが「どの内容を主節へ置くか」という Ch10 の情報設計である。節がつながっていても重心がずれていれば、英語としてはまだ重い。
最終形
関係詞で複文を安定化する手順
- まず主節の S-V を固定する
- 説明したい名詞を先行詞として決める
- 関係節の内部で何が欠けているか見る
- その空所を who / which / that / where などでつなぐ
一言でいうと
関係詞は、名詞の後ろに節をつないで情報を後置する装置であり、主節を先に立ててから空所を見抜くのが基本である。